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CAGE2:あの日の同罪ー立花 直ー2
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「好き、好きよ。ねぇ、直……もっと私を愛して。」
僕は母に逆らえず、言われるがまま身を寄せた。
もちろん父と弟には言えず。
毎夜行われる蜜月関係。
けれど、そんなこと長く続くはずもなく……
ある晩、その日も父が出張に出ていたはずで、僕と母は夢中で求めあっていた。
その最中、急に出張がなくなった父が帰宅してしまった。
僕らの関係を目撃した父は当然怒り、母と僕を引き剥がした。
父は怒り狂い、弟は泣きわめき、母は発狂寸前で、僕の家庭は崩壊した。
……僕が壊してしまった。
あの光景は今でも胸を締め付ける。
そして、運命の夜……
僕は父によって自室に閉じ込められ、母と会うことを禁止されていた。
その夜、自室のドアがゆっくりと開き、そこには変わり果てた母が佇んでいた。
「……お母さん?」
「直……直………ごめんね。愛してしまって、ごめんね……」
ボロボロと落ちる滴を僕は掬えなかった。
母はゆっくりと近付いて僕の身体にすがった。
「もう、誰も…幸せじゃないね……っ」
「お母さん………」
「直、お願いがあるの………お母さんの幸せのために、家族の幸せのために、聞いてくれる?」
「………うん。いいよ、僕に出来ることなら。なんだって。」
一度身体を離した母は僕の手に、光る包丁を握らせた。
「これでお母さんを殺して。」
「…………え?」
「もう、ダメなの………。もう戻れないの……。だから終わりにしたい。これで私を消して……それが私の、家族の一番の幸せだから。」
包丁を握らされた手が震えた。
「や……嫌だよ!そんなの……」
それは初めての反抗だった。
「お願い……直、お母さんのこと好きよね?」
「好き、好きだよ……だから」
「じゃあ言うこと聞けるよね?」
残酷だと思った。
けれど同時に僕への罰なんだと理解した。
「ごめん、ごめんね。許さなくていいから………せめて直は笑っていてね。」
母は包丁を握っている僕の手を懐に勢いよく寄せた。
生暖かい感触が手に伝った。
溢れ出るどす黒い血が床を濡らしていく。
母は泣き笑いながら、僕に凭れた。
僕はその身体をただ抱き止めた。
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