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CAGE2:あの日の同罪ー立花 直ー6
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洋side
学生、家族連れ、カップル……辺りを見渡せば人、人、人……。
ガヤガヤと雑音が耳に入る。
「ーーお待たせしました。ホットで宜しかったですよね?」
目の前に差し出されたのは紙コップに入ったホットコーヒー。
ニコッと微笑む立花からそれを受け取る。
立花の傷が癒えてから2日……俺達は映画館へ来たわけだが、正直もう帰りたい。
「あの、ありがとうございます。我が儘聞いてくださって…」
立花が嬉しそうに目を細めたため、言葉は飲み込んだ。
「……別に。」
「今日はアクションものにしました。恋愛映画よりは倉橋さんも退屈しないかなって思いまして…」
と気遣いをしている立花の手には紅茶とポップコーンがちゃっかり抱えられている。
……楽しそうだな。
「中、もう入れるようなので座って待っていましょう。」
差し出されたチケットも受け取って、立花に続いて中へと入る。
チケットカウンターより幾分か静かな室内。
席は端の二列並んだ一番後ろだった。
「倉橋さんもどうですか?」
ずいっと視界に入ってきたのはポップコーン。
やたら甘ったるい匂いがする。
キャラメル味だと立花は満足そうに語る。
甘いものは得意ではない。
断ろうと思ったが、それを頬張る立花の顔があまりにも嬉しそうで、つられて一つ口に含んだ。
「………甘い。」
それは案の定甘くて、直ぐ様珈琲に口付ける。
「そりゃあキャラメルですから。倉橋さん、甘いものは苦手なんですね。」
良いことを知ったと立花は上機嫌だ。
「………甘いものは苦手だが、辛いものは好きだ。」
情報を追加してやれば、立花は驚いて俺を見る。
「…なんだ?」
「そんな風に貴方自身のことを話してくださるなんて今までなかったので、少し驚きました。でも嬉しい。」
ふふふ、と笑う表情は悪くない。
そんな事思っていたら、急に室内が暗くなった。
「あ、始まるみたいです。」
スクリーンの光に照らされた無邪気なその横顔を、俺は暫く見つめていた。
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