アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE2:あの日の同罪ー立花 直ー14
-
何でも屋の事務所を後にして、僕達は雪見くんのアパートに向かう。
僕が会いに行きたいと言った我が儘に倉橋さんは付いてきてくれるようだ。
ビルを出てすぐ倉橋さんから深い溜め息が漏れた。
「アンタは本当に…どうしてそんな予測不能なことばかりするんだ。」
「すみません……。事前にお話ししたら絶対反対されると思いまして…」
「当たり前だ、分かってるなら何故やる。」
「僕も役立ちたいんです。貴方のために。」
家事だけでも充分だと倉橋さんは言うけれど、それじゃあダメだ。
「僕は貴方の隣に立っていたい。」
「…………。」
倉橋さんは何も言わず小さく息を吐き出しただけだった。
「怒らないんですか?」
「…もういい。怒ったって無駄だ。アンタが頑固なことは大体理解した。ただし、一人で依頼を受けるのはなしだ。アンタは危なっかしい。」
諦めにも似た妥協案に僕は頷く。
ふと、隣を歩く倉橋さんの右手の小指を掴んだ。
「……?」
「ふふふ」
「…何だ?」
「いえ、何でもないです。」
振り払われないんだなぁ…。
そんな小さな事がこんなに嬉しい。
手を離せば倉橋さんは益々訳が分からないと怪訝な目で僕を見た。
「小さな幸せを見つけました。」
「……尚更意味が分からない。やっぱアンタは予測不能だ。」
早く貴方にも“幸せ”が訪れるといい。
そのためにも僕は、貴方と対等な立場で、向かい合わなくては。
「僕は自分の罪を許せません。償いきれるものではない。でもこの罪が唯一倉橋さんとの出会いをくれたのだとしたら、或いは僕は少しだけこの罪を受け入れられる気がします。」
これは、一生の枷だ。
それでもそれが倉橋さんとの繋がりならば、悪くはないのかもしれない。
倉橋さんは短く、そうかとだけ呟いて、僕らはまたゆっくりと歩みを進めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 269