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CAGE2:あの日の同罪ー立花 直ー30
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珈琲を持って、ソファーに腰掛けた立花は思い出したように口を開く。
「そう言えば上月さんが、報酬支払うから事務所に来るようにって言ってましたよ。」
「……ん。」
「それから倉橋さんをここまで運んでくださったのも上月さんなので、お礼も忘れずに。」
その言葉には顔をしかめるしかない。
何言われるか堪ったもんじゃないな。
「はぁ……」
「そんなあからさまに嫌な顔しなくても…」
「…アイツは何考えてるのか全く掴めない。」
「確かに。」
クスクスと笑う横で、俺は二度目の溜め息をつく。
「珈琲、飲んだら行きましょうか?」
「………そうだな。ってアンタも行くのか?」
「はい。帰りに食材の買い物付き合っていただけますか?」
ニコニコ笑う顔に“荷物持ち”の文字が見える。
ささやかな復讐だな……。
「分かった。」
「ありがとうございます。」
一口飲んだ珈琲は変わらず俺好みの味だった。
ーーーーーーーーー
事務所に顔を出せば、ニヤニヤとした上月に迎え入れられた。
「やぁ、良く眠れた?はい、報酬。」
「……どーも。」
報酬だと言われ差し出された茶封筒を受け取ろうとしたが、上月の手が離れない。
「他にも言うことあるだろう?」
「……何?」
「とぼけるんだ?折角ベッドまで優しくお姫様抱っこで運んであげたのに。」
「………やめろ、変な言い方するな。」
「事実だよ。ほら、優しい上月さんにお礼は?」
「くっ………すまなかった。」
「お・れ・い」
「………………ありがとうございます。」
嫌々言った、否、言わされた台詞に上月はうんうんと頷く。
「よろしい、やっぱ感謝の気持ちは大切だよね!」
「チッ……」
「舌打ちしなーい!」
そんな俺達のやり取りを立花はクスクスと笑い、葉桜は呆れた様子で見ていた。
「……次の仕事は?」
「ああ、それなんだけどねーー」
と、上月が言い掛けたとき、事務所の外からドタドタと煩い音が聞こえてきた。
何だ?と全員の視線がドアへと集中する。
俺は立花を背に隠すようにして、ドアの外へ身構えた。
少ししてガチャッとドアが開き始めた。
同時に中へと人が転がり込んでくる。
「わぁお」
「これは……」
上月と立花の声が重なる。
床に転がっているのは、どう考えてもまだ小学生の年端もないガキだった。
「ハァ……ハァ……」
ガキは肩で息をして、やっとの思いで立ち上がると、キッと俺達を睨み付けてくる。
「ハァ……ハァ……何でも屋に、依頼に来た……」
良く見ればその姿はボロボロで、服の隙間から見える肌は、至るところが傷だらけだった。
「俺の……俺の親父を……殺してくださいっ」
全員が呆気に取られる中で、俺だけは別の世界を見ていた。
ガキの姿が何かと重なる。
ああ、また蓋をしないと……記憶が戻りきる前に。
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