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CAGE3:少年の記憶と過ち1
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直side
「俺の……俺の親父を……殺してくださいっ」
僕達は呆気に取られ、誰も言葉を発せなかった。
突然舞い込んできた少年は、ボロボロの姿で、更には父親を殺してほしいと依頼してきた。
言いきった少年は事切れたように、ふっと意識を失い、床に倒れ込んでいく。
「ーー危ないっ!」
このままでは床に頭を強打してしまうと叫んだ瞬間、いつの間にか距離を詰めていた倉橋さんが少年の身体を支えた。
ホッと胸を撫で下ろし、僕達も少年に近づいてみる。
近くで見れば怪我が酷い状態だと良く分かる。
「これは普通じゃないね。おそらく…………。取り敢えず手当てが先だ。啓介、手伝ってくれるかな?」
「はい。」
上月さんが少年を抱えて奥の部屋へと入っていく。
「君達はそこで待つように。」
と念を押されて、僕と倉橋さんは大人しく事務所で待機となった。
「あの子の傷…」
「ああ……虐待の痕だろうな。」
パッと見ただけでも新しいものから古いものまで見受けられた。
予想通りの回答に気持ちが重くなる。
「親父を殺せと言っていた……大方、その親父に虐待され逃げ出してきたんだろう。」
間違えようのない推理に僕は、そうですねとだけ返した。
僕は愛しすぎてしまったが故に人を殺めてしまった。
あの子は憎しみのあまり人を殺めたいと思っている。
同じ結果を望めど、過程はこんなにも違う。
少しして上月さんと葉桜さんが奥の部屋から姿を見せた。
「どうでしたか?」
「うん、取り敢えず出血は止めたし、今は眠ってる。ただ栄養失調にもなりかけてるから、その辺は少しずつ回復させてあげないとかな。」
栄養失調……食事もろくに与えてもらえなかったと言うことだろう。
「さて、あの子の素性はこちらで調べるとして……倉橋くん、立花くん、暫くの間あの子を引き取って貰えるかな?」
「…断る。警察にでも保護してもらえば良い。」
「それはそうなんだけどね。ほら、一応依頼人だから。片が付くまでは面倒見てあげないと。」
「………ガキは嫌いだ。」
「でもこれ仕事だから。」
ニコッと笑った上月さんは有無を言わせない。
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