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CAGE3:少年の記憶と過ち5
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「お粥、食べてくれると良いんですが…」
部屋を出て、ソファーに腰掛けていた倉橋さんの隣に並んで腰を下ろす。
「……食うだろ。」
「そうですかね……かなり警戒してましたけど。」
「……食うよ。背に腹はからえれない。」
倉橋さんにしては珍しく饒舌で、断定した言い方だった。
「何か根拠でも?」
問い掛けに少し遠い目をした。
「………あの目、」
近付いたと思っていたのに、また遠ざかっていくような気がして、僕は倉橋さんの服の裾を掴んだ。
「………昔の自分を見ているようだ。」
僕はまだ、倉橋さんのことを何も知らない。
「……だから分かる。さっき食えるってことを見せてやったんだ。ちゃんと食うだろ。」
だから心配するな、と頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「……それより腹へったんだが。」
「ふふふ、はいはい。分かりました、今から作りますね。」
「……ん。」
倉橋さんの過去を僕は何も知らない。
でもその反面、今の倉橋さんを僕はよく知っている。
例えば朝が弱いこと、甘いものが苦手なこと、珈琲が好きなこと、不器用だけど優しいこと。
僕が彼の過去について知っているのは、同じ罪を背負っていると言うことだけ。
それでもそれは紛れもない真実で、僕たちを確かに繋ぐものだ。
だから僕は咎めない。
彼がどんな過去を生きてきたのだとしても。
「……何作るんだ?」
「オムライスです。僕、大好きなんです。もしかして苦手ですか?」
「いや……食ったことない。」
キッチンの隣に立って僕の手元を不思議そうに眺めている。
「倉橋さんって料理したことありますか?」
「………ないな。」
真剣に答える姿が何だか面白くて笑った。
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