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CAGE3:少年の記憶と過ち6
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「はい、この卵割っていただけますか?」
差し出せば倉橋さんは素直に受け取った。
「どうすればいいんだ?」
「優しく当ててヒビを入れてから割るんです。あくまで優しく。一個、見本で割りますね。」
僕が卵を割る動作を披露して、倉橋さんは無言で頷いた。
「ではこのボウルにどうぞ。」
「……ん。」
差し出したボウルの上、倉橋さんは…
見事に殻ごと粉々に卵を粉砕した。
「倉橋さん、僕優しくって言いませんでした?」
「………」
「もう一個、やってみますか?」
「………ん。」
二個目の卵は黄身は割れてしまったが、殻が入り込むことはなく無事使えそうだ。
「……やっぱこう言うのは向かない。」
「そうですか?飲み込みが早いので、すぐに何でも出来るようになると思いますよ?」
「……いや。それに、俺には必要ない。アンタがいれば。」
「え?」
「アンタが作ってくれる。だから必要ない。一緒に生きるんだろう?」
その言葉は何だか擽ったくて……
「それはずっと、って意味ですか?」
「……違うのか?」
それから恥ずかしくて……
「違わない……違わないです…」
とても温かい。
「ふっ……座って待ってる。オムライス、期待してる。」
本当にどうしようもないぐらい嬉しくて、
僕は何度、この心臓を鳴らせば良いんだろう…。
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