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CAGE3:少年の記憶と過ち7
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食事を終えて、寝室を覗いた。
少年は変わらずベッドの上にいて、僕の姿を見るとビクッと身体を震わせた。
僕は中に入らず、顔だけを見せて、少年に声を掛ける。
「落ち着きましたか?初めまして、立花 直と言います。」
「…………」
「さっきの方は倉橋 洋さんで、あ、誤解しないでくださいね。あの人、本当はスゴく優しいんです。貴方のこと心配してるんですよ。」
と情報を付け加えたら、背中から余計なことを、と言葉が飛んできた。
「ふふふ、少し照れ屋さんなのかも。」
少年にだけ聞こえるように、こそっと囁いた。
そうしたら背けられていた顔が僕の方へ向く。
「……それ、旨かった。」
少年の言葉にお粥を入れていた器を見れば、中が空っぽになっていた。
「それは良かったです。正直、料理はまだ練習中なんですけどね。器、下げたいので中に入っても?」
少しの間の後、少年はコクリと頷いた。
それを待って、僕はゆっくり中へと入る。
「傷、痛みますか?」
「………………平気。」
てっきり返ってこないと思っていた返事。
少し驚いたが態度には出さないよう気を付ける。
「ゆっくり休んでくださいね。」
「そんな事してたらアイツがーー」
「大丈夫、誰も来ませんよ。ここでは誰も貴方を傷つけたりません。だから、ね?ゆっくり休みましょう。」
少年は少し思案して、俯いたまま頷いた。
「あの、もしよかったら名前教えていただけませんか?」
「………暁斗(アキト)」
「暁斗くん、素敵な名前です。ありがとう、教えてくれて。」
目は合わせてもらえないけれど、名前が知れただけでも一歩前進ですね。
「僕と倉橋さんは隣にいるので、いつでも声かけてくださいね。」
空になった器を手に、僕は寝室から出る。
ソファーでは倉橋さんが読書をしつつ、食後の珈琲を楽しんでいるところだった。
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