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CAGE5:日常に潜む影11
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「それで、それで!?」
詰め寄る顔が視界いっぱいに広がる。
「ええっと、その……このピアスをくださって……」
と耳のピアスに触れると、目の前の表情は楽しそうに笑う。
クリスマスが終わり、年越しの準備を始める頃、僕は雪見くんと共にカフェにてお茶を楽しんでいた。
「へぇ……あの倉橋さんがプレゼントかぁ……。立花さん愛されてますね!」
「そう……だと良いんですが……」
「絶対そうですよ!あ、マフラーはどうでした?」
「ちゃんと喜んでくださいました。出掛ける時は必ず着けてくださってます。」
「もう!やっぱり愛されてるじゃないですか!」
少々興奮気味の雪見くん、それから彼の隣には友人だと言う折原 茅斗(オリハラ カヤト)くんが腰掛けていた。
茶色いふわふわした髪、笑う顔も負けないぐらいふわふわと優しいものだ。
口数は多くないけれど、とても優しい性格でおっとりとした空気を感じる。
「ね!茅斗もそう思うよね!?」
「うん。その倉橋さんって人に会ったことないけど、立花さんの事大事に思ってるんだなってことは伝わってくる。」
折原くんにも“男”の恋人がいるらしく、偏見は特にないらしい。
「そう言えばお二人はまだ名前で呼びあってないんですか?恋人なのに?」
雪見くんの疑問の声に、クリスマスの翌朝の出来事を思い出す。
ーーーーーーーーーーーー
クリスマスの翌朝、目が覚めると僕の身体は例のごとく綺麗に後処理が済まされていて、狭いシングルベッドで僕は抱え込まれるように横たわっていた。
しっかりと腕を回している倉橋さんは気持ち良さそうに寝息を立てているものだから、目が覚めたものの身体を動かせず、少しの間この寝顔を見つめている。
『……もっと、呼ばれたい。』
劣情的な眼差しと熱を帯びた声は鮮明に思い出せる。
「…洋、さん……」
改めて名前を口にすると恥ずかしさに身体が火照る。
「………ん…………」
小さな唸り声の後、うっすらと瞼が開いた。
ゆっくりと瞬きをした後で視線が僕を捕らえた。
「おはようございます。」
「………ん、おはよう。」
挨拶と共に頭を撫でられ、額には唇が触れる。
「ちょ、倉橋さん!恥ずかしいです……」
「……もっと恥ずかしいことしたろ?」
「う……そうですけど……そうじゃなくて…」
「……ん?」
「こう……むず痒くて……くすぐったくて……」
「ふっ……幸せ?」
「うー………はい、とても……」
的確な言葉に僕は頷くしかない。
「……で?」
「え……?」
「名前、また元に戻ってる。」
「あ……」
「もう呼ばないのか?」
意地悪く微笑む顔が目の前に広がる。
「そ、そういう貴方はどうなんですか……?」
「…ん?呼んでほしいか?」
「それは、まぁ……」
どちらかと言われれば、呼んでもらえた方が嬉しいに決まっている。
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