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CAGE5:日常に潜む影12
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「……アンタが呼べたら呼んでやる。」
「ず、ずるいです……」
「ご褒美だ。ほら、呼んでみろ。」
覗き込まれるように至近距離で目が合う。
「よ、………」
「………ん?」
「よー……………む、無理です……すみません……」
「ふっ、ははは、アンタは本当可愛いな。」
破顔して笑う顔を直視出来ずに手で顔を覆う。
「い、意地悪ですよ……僕をからかって遊ばないでください。」
「……アンタを見てるとそうしてやりたくなる。俺は悪くない。」
「何ですか、それ。僕だって悪くないです…」
「…………顔、見せて。」
「や、嫌です………」
「………ダメ。…………直?」
僕の名前を紡ぐ声は優しく耳元で響く。
おずおずと手を退ければ、してやったり顔の倉橋さんがいる。
「ずるい……」
「………早く慣れるんだな。」
頭に置かれる優しい手を振りほどく術なんて、僕は知らない。
「努力します……」
「……ん。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クスクスと笑う声に現実へと意識が引き戻される。
雪見くんと折原くんは二人揃って僕を見て微笑んでいる。
「あ、あの…?」
「ふふ、すみません。立花さんが一人で百面相してたから。」
雪見くんの言葉で反射的に頬に手を添えた。
「そんなに顔に出てましたか…?」
「それはもう、感情筒抜けでしたよ。その様子だともうお互いに呼び合っているんですか?」
「ど、努力中です……」
二人の視線に堪えかねて紅茶を一口啜る。
「そう言えば茅斗は彼氏とうまくいってるの?」
雪見くんの言葉に今度は折原くんが頬を赤く染める番だ。
「うん、そうだね。」
「折原くんの彼氏さんはどんな方なんですか?」
僕の問いに折原くん目を細めて微笑んだ。
「とても格好よくて優しくて……自分には勿体ないなっていつも思うんです。」
「そんなことないって!すっごくお似合いだもん。茅斗のこと溺愛してるもんな、冴嶋(サエジマ)さん。」
「うん……愛されてるって感じてはいる。本当、勿体ないぐらいだよ。」
その顔は照れつつも、恥じることなく堂々と相手の愛情を受け入れている様は羨ましいぐらい眩しい。
「冴嶋さんって大人の魅力あるよね。いくつだっけ?」
「28歳だよ。歳って言うよりは元々の性格なんだろうけど、いつも冷静で落ち着いてるから喧嘩とかもないし……今のところはうまくいってるかな。」
「いいなー、僕のとこはよく喧嘩になる。」
むーっと口を尖らせる雪見くんに僕と折原くんは苦笑した。
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