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CAGE5:日常に潜む影16
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事務所へ入ると上月が気持ち悪いぐらいに笑顔で俺達を迎えた。
「二人揃って来るなんて、いつの間にそんな仲良くなったの?」
「………偶然会っただけだ。」
わざとらしすぎる発言に怒る気にもなれず、溜め息混じりで返してやる。
「さっさと用件を言え。」
蒼は余計なことは言わず、本題へと切り出す。
「全く、コミュニケーションを取らないんだから。はい、これ。」
それぞれに手渡されたいつもの茶封筒。
「今回の依頼は人探しなんだけど、少し込み入った事情があってね。君たち二人で仕事をしてもらうよ。」
「人探しぐらいなら俺一人で十分だ。」
蒼の言うことはもっともだ。
俺が一緒に動くメリットなんて何もない。
「だーめ。所長命令だからね。中、見てもらえる?」
手にしていた茶封筒から一枚の紙を取り出す。
いつも依頼内容が書かれているものだ。
そこに書かれた依頼主の名前を見て、俺は思わず瞠目した。
「依頼主は立花 直。君たちの知る立花くんで間違いないよ。」
確かに書かれた名前は見覚えがある。
……アイツ、また勝手に………。
「依頼は彼の家族を探してほしいとのことだよ。」
「…………家族。」
「残念ながら母親が居ないことは二人とも知っているね?父親と弟を探してほしいそうだ。」
……家族を探す。
以前、立花は病院に行くことを酷く怖れた。
父親が居るかもしれないからと。
……一体何を考えているんだ……。
「ってことだから二人で一緒に行動してね。」
「くだらない。俺を巻き込むな。居場所の情報だけはくれてやる。一緒に行動なんてごめんだな。」
「蒼くん、言ったでしょ?所長命令だって。この依頼を断るなら今後君に仕事は回さない。」
「…………………」
押し黙ってしまった蒼の様子から、それはかなり痛手な提案らしい。
「明日から動く。」
一言だけ俺に発すると蒼は足早に事務所を出ていった。
「大丈夫、仕事はちゃんとやる子だから。」
残された俺に上月は微笑み、そう言った。
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