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CAGE5:日常に潜む影20
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「……そんな顔するな。」
「…はい。……僕の我儘に巻き込んでしまって、すみません。」
「……謝らなくていいと言っただろ?」
それでも申し訳なさそうな表情のままの頭を撫でた。
「……笑顔で見送ってもらわないとやる気が出ない。」
「ぇ……」
「……俺が怪我して帰ってきてもいいと?」
「だ、ダメです!」
「ふっ、じゃあ笑って。」
眉尻を下げて思案をしたあと、思いきったように持ち上げた顔は笑みが浮かんでいた。
「……ん、アンタはそういう顔の方が似合ってる。」
「ありがとう……ございます。」
「……行ってくる。」
額に軽く口付けると直は顔を真っ赤にさせ、額を押さえたまま間抜け面を晒した。
「行ってらっしゃい……。」
「ふっ、はは、いい顔してるよ。」
「か、からかわないでください!…あの、本当に気を付けてくださいね。」
「……大丈夫だ、ただの人探しだからな。危険なことは何もない。」
煮え切らない様子の直を連れ立って玄関へと戻る。
「……待たせた。」
「行くぞ。紅、この家から出るなよ。」
冷たい口調ではあるが、紅の頭を撫でる手付はとても優しいものだった。
二人に見送られ家を出ると一枚の紙を手渡された。
「立花 直の家族に関する資料だ。」
そこには二人の情報が簡易的にだが書かれている。
父:立花 兼久(タチバナ カネヒサ)、弟:立花 柊(タチバナ シュウ)。
「父親は未だに精神患って入院中。弟はまだ高校生だ。」
紙にはそれ以外にも何処の病院にいるのか、何処の高校へ通っているのかなどの情報が書かれていた。
それにしてもたった一日でこの情報量……上月の言うとおり仕事はちゃんとこなすらしい。
「俺の専売特許はここまでだ。ここから先はお前が決めろ。」
「……まずは父親に会いに行く。」
「なら病院だな。ついてこい。」
一悶着あるかと思っていたが案外協力的で助かったな…。
そんな事を思いながら先を行く背を追った。
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