アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE5:日常に潜む影23
-
洋 side
「ここだ。」
蒼が足を止めたのは306号室と書かれた病室の前だった。
「……こう言うのって勝手に入って良いものなのか?」
「面会希望って言ったって俺達二人だと怪しまれるだけだろ。」
蒼の言葉に妙に納得してしまった。
愛想がいい直や紅がいるならまだしも、確かに俺達二人じゃ怪しまれて仕方がない。
蒼の調べてきた情報によると病室は個室らしい。
……一体どうやって仕入れてくるんだろうな、そんな情報。
蒼が俺に視線を投げつつ、ドアを開けろと首を動かす。
その視線を受けて俺はゆっくりと目の前のドアを開いた。
ドアの向こうは白い無機質な空間だった。
一番最初に目に入ったのは白いベッドに上半身を起こした状態で座り込んでいた中年の男だ。
男は窓の外を眺めたまま動かない。
一度隣に立っていた蒼の方へ視線を向けたが、中に入るように促され、俺は白い部屋へと足を踏み入れた。
俺達が中へ入ると男はその気配に気付いたようで、窓に向けていた顔を振り向かせた。
「おや珍しい、私に客とは……」
白髪混じりの髪は染めていないのだろう。
年相応な皺もある。
それでも吐き出された言葉と共に浮かんだ微笑みは、直を彷彿とさせるもので間違いなく立花 兼久、直の父であると俺に確信させた。
「私に君達のような知り合いはいないはずだが……病室を間違えていないかい?」
兼久は俺と蒼の顔を交互に見比べ、首を捻る。
「……立花 兼久さん」
俺が名前を知っていることに多少なりと驚いたようで、興味深そうに目を丸くした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
214 / 269