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CAGE5:日常に潜む影25
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意識が朦朧として沈み掛けたとき、ドアの開く音がして、次の瞬間には叫ぶような声が聞こえた。
「ーー父さん!!!」
中へと駆け込んできた人物は立花 柊で間違いないだろう。
呼ばれた拍子に手の力が緩んだのを見逃さなかった蒼が、兼久を引き剥がしていく。
急に入り込んできた酸素にむせ返ったが意識は飛ばさずに済んだ。
「ゲホッ……ゲホッ………」
「だ、大丈夫ですか?」
駆け寄って俺の顔を覗き込んだ柊は眉尻を下げていた。
「……ああ」
「良かった。」
ホッと胸を撫で下ろすと今度は兼久の方へと駆け寄っていく。
「父さん……」
「柊……柊……!アイツが……直が……あの悪魔がまた何もかも滅茶苦茶にしに来たんだ!早く、早く殺さないと」
「落ち着いてよ、父さん。兄さんはここに居ない。」
「悪魔が……悪魔が………」
「父さん、大丈夫だから。何処にもあの人は居ないよ。」
カタカタと震えが止まらない兼久の背中を撫でながら、柊は俺達へ目配せをした。
蒼は小さく息を吐くと床に座り込んだままだった俺の腕を取る。
「いつまで座り込んでるつもりだ。行くぞ。」
ほとんど身長は変わらないはずなのに引っ張られれば簡単に身体が持ち上がった。
見た目以上の力があるらしい。
「何だ?」
「……いや」
「行くぞ。」
先を行った蒼に倣うように俺も病室を後にする。
最後に見た兼久の顔には先程までの穏やかな笑みの影さえも見えなかった。
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