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CAGE5:日常に潜む影26
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病室から柊が出てきたのは、それから30分ほど経ってからだった。
ドア横のベンチに腰掛けていた俺達に申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。
「父が大変失礼なことを…申し訳ありませんでした。」
ゆっくりと上げられた顔を改めて見ると所々直を思わせる影がある。
だがどちらかと言えば母親似なのだろう。
直を綺麗だと表現するなら柊は可愛いと言う方がしっくり来る。
高校生と言うだけあって子供らしさもまだ残る顔だ。
「…いや、突然来た俺達が悪い。」
「普段はあんな状態になることはないんですが……その、兄さんのことになるとどうしても……」
「……………」
「貴方達は兄さんと何かしら関係がある方、で良いんですよね?」
「………そうだ。少し話がしたい。」
「それなら病院の外でも宜しいですか?ここだと父に聞こえてしまうかもしれないので。」
構わないと返せば柊は前に立って歩き始める。
まだ発育途中の背中は俺の肩よりも背が低い。
直はそこそこ身長があるし、コイツもこれから伸びるんだろう。
「信号渡った向かいに公園があるんです。少し寒いですが大丈夫ですか?」
「……そんなに時間をかけるつもりはない。」
「分かりました。」
向かった公園は昼間だと言うのに寒いためか人影が疎らだ。
公園の入口にあった自販機で缶珈琲を買った。
柊に何が良いと訊いたらミルクティーだと言うので、それを買って手渡す。
「ありがとうございます。」
寒さで頬が赤らんでいるためか笑えば更に子供らしさを強調させた。
手渡してから、ふと思い出した。
直も紅茶派だったな。
それに甘党だ……。
離れてても、兄弟……ってことだな。
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