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CAGE5:日常に潜む影28
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「本当に……兄さんを苦しませずに会うことが出来るんですか……?」
「………出来ないことは言わない。」
「ーーありがとうございます!俺、何年だって待ちます!また笑った兄さんに会えるなら。」
興奮が隠しきれないようで笑顔が詰め寄るように広がった。
まだ小さい頭へ手を伸ばす。
髪の色は黒いが触り心地は直に似てる。
それに……
「………似てるな。」
「え?」
「……笑った顔、直に似てる。さすが兄弟だな。」
「え……ふふ、本当ですか?嬉しいです、もう誰もそんなこと言ってくれないから。」
手を退けると柊は真っ直ぐ俺を見つめた。
「倉橋さんは直兄さんのこと大切にしてくださってるんですね。」
「………………」
「見ているだけで分かります。兄さんの名前を呼ぶ時とても優しい顔してますから。」
「………大切………にしたいとは思ってる。出来ているかは分からないが。」
「充分です。安心しました、兄さんの傍に倉橋さんのような人が居てくれて。」
手にしていた缶珈琲はすっかりと冷めきった。
「兄さんに伝えてください。父さんは俺が何とかする。どうか心配しないでほしい。ずっと待ってるからって。」
分かったと了承の意を示したところで蒼が口を開いた。
「話がついたなら帰るぜ。長居は不要だ。」
「……ああ」
歩き始めた蒼を追って俺も柊も足を進めた。
公園を出てすぐの横断歩道で柊は病院に戻ると言うので、そこで別れることにした。
「本当にありがとうございました。俺、信じて待ってますから。」
言葉を受け取って、信号が青になった横断歩道を俺と蒼は渡る。
渡り終えて数歩歩いたところで俺は足を止めた。
「どうした?」
怪訝な顔で俺を見る蒼もまた足を止めた。
妙な胸のざわつきがした。
頭で警告が鳴る気がした。
ゆっくりと来た道を振り返る。
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