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CAGE5:日常に潜む影29
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横断歩道の向こうでは未だ柊がこちらを見て、俺達を見送っていた。
そんな柊の背中に俺の目は釘付けになった。
一度捕らえてしまえばもう目が離せない。
ガタガタと身体の芯から震えが来る。
そんな恐怖の対象が俺の目には写っていた。
「……倉橋……春…伊……」
見間違えるわけがない。
例え何年経っていようと、忘れるはずがない。
しっかりと記憶に刻まれたあの顔を。
あの男と言う存在を。
「……な、んで………」
聞こえるはずのない呟きにアイツは厭らしく笑った。
何も気付いていない柊の背中へと手が伸ばされる。
信号は、赤だった。
視界の端には疑うことない速度で走るトラックがいた。
「ーーくそっ…………」
固まった足を叱咤して、必死に駆けた。
あの手から柊を遠ざけなければ、それだけが頭を占めていた。
「ーーチッ………おい!」
舌打ちと共に前に動かしていた身体が物凄い力で引き戻された。
と同時に派手なクラクションを鳴らし鼻先をトラックが掠め通っていく。
一瞬何が起こったのか理解が出来ず、とりあえず俺の身体は車道に出かけていた所を蒼によって引き戻され、歩道へと転がったらしい。
ハッとして向こうの歩道へと目を向けた。
そこには何かを叫ぶ柊が居るだけで、あの男の姿はなかった。
幻を見たのではないかと思うぐらい影も見当たらなかった。
幻……いや、そんなはずない。
呆然としていた俺は、伸びてきた蒼の手を避けることも出来ず、胸ぐらを掴まれる。
「お前は死にたいのか!?周りを気にするのも良いが、お前が一番狙われているんだって自覚を持ったらどうだ?……上月が警告したはずだろう?」
そんな蒼の言葉も遠くに聞こえるほど、やけに煩く心臓が鳴っていた。
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