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CAGE5:日常に潜む影32
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二人が部屋を出て、ドアが閉まると一瞬静かな間が流れた。
「あ、コートを…」
と直が手を差し出したので着ていたコートを脱いでその手に渡す。
その際、何かに気付いたようで直の目が驚いたように見開いた。
バサッと音がしてコートが床に落ちる。
「それ……」
指を差されたのは首元だ。
「……?」
「青紫の痣が……」
言われて思い出す。
そう言えば首絞められたな…すっかり忘れていた。
コートで隠れていたから直も今気が付いたんだろう。
「……大丈夫だ、大したことない。」
「でも……」
「……問題ない。ほら、こうして生きてる。」
「そうですけど……」
近付いてきた直は恐る恐ると言った様子で俺の首に触れた。
「痛みますか?」
「……いや」
「ご自身でちゃんと見ましたか?」
気を遣って撫でるように触る手が少し擽ったい。
「……見てない。」
「本当に凄い色してますよ。あ、冷やしましょう!」
思い立ったように引かれていく手を掴んで、そのまま腰に腕を回す。
「えっ、と……」
「……少し、このまま。」
抱き寄せた肩に額を預けた。
驚きに強張っていた直の身体も次第に力が抜けていき、背中にそっと手が回される。
「……二人とも元気だった。弟はアンタに会いたがっていた。」
「良かった…。柊も僕のこと怒ってるのだと思ってました。」
「……アンタが会いに来るのをずっと待ってると、そう言っていた。」
背中にある手がぎゅっと服を掴む感覚がした。
「そうですか……でも僕はーー」
「一緒に行こう。」
「………」
「…俺が手を引いてやる。しっかり掴んで離さない。アンタのペースで構わない。だから、いつか一緒に会いに行こう。」
背中を掴む手に負けないぐらいの力で直の身体を抱き締めた。
「……何年掛かっても良いんですか?」
「ああ」
「……僕にはその資格があるでしょうか?」
「ああ」
「……絶対ついてきてくれますか?」
「嫌だと言われてもついていく。」
「そうですか……そっか、うん……それなら頑張ってみようかな…。」
顔を見ずともその声は綻んだものだった。
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