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CAGE5:日常に潜む影33
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ありがとうございます、腕の中で心地良い声がそう言った。
同じ石鹸、同じ洗剤を使っているはずなのに直からは良い香りがする。
甘く、優しく、温かな香り。
「…アンタ良い香りがするよな。」
「え?あ、あれですかね、クッキー作ったから…」
「……いや、アンタの匂いだ。」
「そ、そんな匂いなんてしますか……?」
「…する。」
直は困ったように眉尻を下げた。
甘い香り、心地良い声音、腕に抱く体温。
何に変えても守りたいと、そう思う。
“俺とお前の守り方、どっちが残酷なんだろうな。”
俺はその答えを知らない。
……直なら、答えを知っているのだろうか……。
「……俺はアンタを守りたい。」
「洋さん?」
変わらず額は肩に預けたまま、直の身体をより強く抱き寄せる。
「……アンタが大切に思うものも一緒に守ってやりたいと思う。」
「………」
「例え……」
「……… 」
「……例え俺自身を犠牲にしたとしても。」
背中に回っていた手が優しく宥めるような動きをする。
「……死にたいと思っている訳じゃない。ただ守りたいだけ。何よりもアンタを優先したい、それだけ。」
「はい。」
「……そんな事を言う俺は、残酷だろうか?」
少し間があって、顔を上げてくださいと直が言うので俺は素直に従う。
見上げてくる腕の中の視線と目が合った。
「僕には貴方を残酷だとは言えない。だって僕も同じだから。僕だって貴方を同じように守りたいと思ってる。」
「……………」
「僕だって自分よりも貴方を優先したい。だから、良いんです。だってそれは洋さんの優しさでしょう?だから良いんです。」
「……………」
「貴方の守り方が残酷にならないよう、僕が貴方を守ればいい。貴方の傍にいます、それが僕の優しさだから。」
「……………」
「正しいのかは分かりません。でも例えば十年先、二十年先も、またこうして一緒に笑って居られたのなら、それが全てだと思いませんか?」
遥か遠くを語る眼差しはとても綺麗だった。
綺麗で思わず吸い込まれそうなほど見惚れてしまう。
「……ふっ、爺さんになっても一緒に居るのか?」
「居ますよ、ずっと。洋さんが嫌だと言わない限りは。」
「……ああ、それなら余計な心配だな。」
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