アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE6:止まない愛情6
-
洋 side
何でも屋の事務所。
壁に寄りかかる俺の前にただ無表情に見上げてくる顔が一つ。
まるで人形のようだが、瞬きをするので一応人間ではあるらしい。
「……何をした?」
「?」
「……直に何かしただろう?様子がおかしかった。」
視線を俺から外さないまま傾げていた首を戻して美柴は口を開いた。
「キスをしました。」
あまりにも呆気なく告げられた言葉に、その意味の重要性がすり抜けていく。
「……は?」
間抜けにも聞き返してしまった俺に美柴は何でもないようにもう一度口を開く。
「キスをしました。」
「………何故?」
「気持ちいいことだからです。気持ちいいことは好きです。でも痛いは嫌い。」
「……言ってる意味が分からない。」
「気持ちいいは分け与えるものだと教わりました。だからキスをした。」
まるで当然のことのように述べる美柴に俺は次の言葉を見失う。
一歩俺へと近付いた美柴は腕を伸ばし、首元へと抱きついてくる。
「洋さんにも気持ちいい、あげます。」
引き寄せる腕を外し、その身体を突き飛ばす。
「……前にも止めろと言ったはずだ。」
「どうして?気持ちいいは嫌い?」
「お前との間には必要ない。」
心底分からないと首を捻る美柴は懲りずにその距離を縮める。
「どうして僕を抱いてくれないんですか?」
「…抱く必要がどこにある?」
「立花さんは抱くのに?」
「…アイツは特別だ。」
「特別……。それじゃあ…」
歩み寄っていた足を止めて、美柴は真っ直ぐに俺を見た。
「洋さんの母親も特別な存在でしたか?」
「…………な、に?」
「抱いていたのでしょう?実の母親を。」
初めてだった。
美柴の顔が笑みを浮かべたのは。
「……何故その事を知ってる?」
「言えません。どうしても知りたいのなら…」
美柴は再び俺の方へ足を進め、反射的に後退しようとした身体は既に壁へと背中がぶつかっていた。
「僕を抱いてください。立花さんの目の前で。」
間近に迫るその顔が浮かべる笑みは、怖いぐらい整っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
236 / 269