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CAGE6:止まない愛情9
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抗議の声を上げる直は、ぐいっと顔を寄せてくる。
「そんな貴重な貴方の顔を見ないなんて損です!ほら、隠さないでください!」
「……何言ってんだ、馬鹿。」
「馬鹿でも何でもいいです。僕は貴方に関しては我慢しないと決めたんです。だから見せてください。こっち見て。」
例によって直が頑固なことは重々承知している俺は小さく息を吐き出して、顔を覆っていた右手を直の背中へと回し直し、顔を合わせる。
「……これでいいか?」
「ふふ、可愛い。今の洋さん、すごく可愛いです。」
なんて、幸せそうな顔をするんだろう……。
割りと怒っていたはずなんだが、全てが流されていってしまう。
「……嬉しそうだな。」
「ふふ、嬉しいですから。」
背中に回していた腕で細身の身体を更に引き寄せようとした瞬間、それを制するように手を叩く音が響いた。
「こーら、すぐイチャイチャしない。美柴くんも見てるんだよ?」
余計な忠告に直は声を漏らし、身を小さくしてしまう。
「………邪魔。」
「あのね……まあ、頑張った立花くんに免じて失言は許してあげよう。続きは帰ってからやるように。」
全然有り難くない言葉を頂戴して、俺は来た時と同じように直の身体を抱えあげた。
「わっ!ちょっ、洋さん!」
「……帰るぞ。」
バタバタと暴れようとする直の瞼に口付ければ、たちまち大人しくなり、胸元へ顔を埋めてくる。
上月から塗り薬と依頼料は給料から引いとくよ、という言葉を受け取り事務所を出る。
冷たい風が頬を切る。
隣を歩く美柴に表情はない。
『洋さんの母親も特別な存在でしたか?』
特別……
『抱いていたのでしょう?実の母親を。』
確かに俺はあの女を抱いていた。
そして、あの男に抱かれていた。
それは変わらない事実だが、それを知る人間なんて限られている。
コイツは……
「なんですか?」
口を開いた後で美柴は俺へと視線を投げる。
「………いや。」
「そうですか。」
深く追求はしてこない。
決して崩さないこの顔が描いたあの笑みは、俺に何をか彷彿とさせていた。
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