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CAGE6:止まない愛情12
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「さて、それじゃあシャワー借りますね。」
まるで見間違いであったかのように美柴からは笑みが消え失せ、あっさりと俺の上から退いていくとその足は浴室へと歩いていった。
寝転がったまま腕を動かす。
腕は持ち上がるものの手は痺れて感覚が鈍い。
じわじわと熱を感じるのは止まっていた血が流れ始めた証拠だ。
生を実感させるこの感覚が俺は大嫌いだった。
「……生きてる、まだ。」
それは何度も呟いたことのある台詞。
安堵のために呟いていた訳ではない。むしろその逆だった。
痺れたままの手を無理矢理握り締め、床へと叩き付けた。
痺れを払拭するように数回。
それから何度が握ったり開いたりを繰り返して感覚を取り戻していく。
その場から立ち上がると淹れ掛けの珈琲が視界に入った。
「……淹れ直すか。」
すっかり冷えてしまったそれは横に置いておいて後で俺が飲もう。
別のマグカップを取り出して珈琲を淹れ直し、それを持って寝室へと移動する。
ドアの開閉音でベッドに腰掛けていた直が顔をあげた。
「ん。」
「ありがとうございます。」
と受け取った直だったが手の中のマグカップを見ると首を傾げた。
「これ洋さんのマグカップでは?」
「…取りやすい位置に置いてあったから。気にするな。」
「……そう、なんですか?」
納得のいかない様子だったが頭を撫でれば珈琲へと口付ける。
「美味しい。」
「良かったな。」
もう一口口にするとマグカップをサイドボードへと置いて、直の手が俺の手を握った。
「随分遅かったですね。……一体何していたんですか?」
少し俯きながら視線だけを上にあげ、俺の目を覗く。
「美柴くんと何かありましたか……?」
不安げに揺れる瞳に掛かる前髪に触れた。
「何も。」
「本当に?」
「疑うのか?」
「そうじゃ…ないですけど。……少し……その、嫉妬心が……。」
俺が瞳を覗き込んだら今度は逃げるように逸らされる。
「それを言うなら俺の方だろ?」
「え……?」
驚いて上げられた顔。半開きの唇を指先で撫でる。
「……キス、させたんだろ?アイツに。」
「あれは事故で……」
「事故だとしてもこの唇に触れた。それは事実だろう?答えはYesかNoだ。」
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