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CAGE6:止まない愛情27
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中へと入ってきた美柴はドアに寄り近い位置で床に転がる直の傍へと膝をついた。
「美柴くん…………」
美柴の手が直へと伸びる。
「ーー止めろ、触るな。」
俺の牽制の声に手の動きが止まると、視線がゆっくりと俺の方へと向けられた。
「……似ていますね。でも似ていない。」
矛盾の言葉と共に立ち上がり、こちらへと足を向けた美柴は決して視線を逸らすことはない。
「あの人と同じ目をしているのに、あの人とはまるで違う事を言う。」
「………………」
「あの人は洋さんを愛してると言っていた。愛は温かく気持ちいいものだと本で読んだ。それなのにどうして貴方はそれを受け入れようとしないのですか?」
目の前で足を止めた美柴の無機質な目が俺を見下ろす。
「……愛?あんなものは愛なんかじゃない。」
「じゃあ何だと言うんですか?」
「自分の望むものを、理想を押し付けているだけだ。……独り善がりを人は愛とは呼ばない。」
「…………………。」
美柴は開きかけた口を閉ざし、押し黙った。
それまで逸らされなかった視線が初めて下へと落ちた。
「…………それでも僕は羨ましかった。」
「……………」
「例え独り善がりでも、何かを与えてもらえる貴方が羨ましいと思った。」
「……………」
「空はいつだって霞んでた。世界はいつだって鉛色だった。誰も何も僕には与えてくれなかった。……あの人はいつも貴方に想いを馳せていました。空っぽだった僕の中には貴方に対するあの人の想いが詰まっていった。」
美柴はもう一度踵を返すと直の元へと戻っていく。
「何度か洋さんの代わりを務めたこともあります。痛いことは嫌でしたが、気持ちいいことは好きでした。」
「…………どうしてそこまでアイツに付き従う?」
「何もないからですよ。抵抗しなければならない理由を持てるほどのものが、僕には何もない。僕はあの人に拾われた事実だけを持っていた。それだけのことです。」
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