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CAGE6:止まない愛情31
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直side
「やっ……嫌です!離して、離してください!」
「………………」
「戻らなきゃ、洋さんが!」
浮いた足をバタつかせても、抱えあげられた身体は無情にも部屋から遠ざけられていく。
「お願い、お願いです……美柴くん、戻って……戻ってください!」
「………………」
何も言わない、言ってくれない美柴くんは先へ進んで行くばかりで気付けば僕達は建物の外へ。
辺りは暗く、今が夜だと知った。
「お願い……お願いですから……こんな、嫌だ……」
「………………」
閑散とした景色。
他の建物は見当たらなかった。
美柴くんが足を止めたのは出てきた建物から少し離れた電信柱の傍。
降ろされた僕の身体は電柱を背に、美柴くんの手で両肩を押さえ込まれてしまう。
「暴れないでください。」
「……離してください。腕も解いて。」
「戻って何が出来るんです?あの人は洋さんよりも頭がいい、それに貴方よりも腕っぷしもあります。戻ったってまた捕まるだけですよ。」
感情の伺えない顔だけれど、嘘をついている訳ではないだろう。
「それでも戻ります。」
「あの人が洋さんを殺す確率はほぼゼロに等しい。でも立花さんが戻って殺される確率は充分にあるんですよ。貴方が……洋さんの大切な人だから。」
掴まれた肩が痛かった。
「僕は殺されるのだとしても戻ります。」
「………どうして?」
「少しでも可能性があるのなら助けたい。離れてなんて生きていけない。洋さんを孤独にしてまで生き残るなら、僕が生きる意味はない。」
「…………………」
「洋さんが、僕の生きる糧だから。」
「……どうしてそこまで…………」
少し細められた目に、僕の心は不思議と穏やかになる。
「愛してるから。そして、愛されてるから。」
「愛………」
「彼の愛で、僕は息をしていける。」
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