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甘え③青ver.
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ピロン
スマホが兄者からのメッセージを表示する。
『今日も遅くなる。』
「……ハァ」
思わず溜息が出た。
兄者と同じ家に住んでいるのに、もう何日も顔を合わせていない。俺が寝てから帰って来て、俺が起きる前に仕事に行く。仕事だから仕方ない。それはわかってる。
でも、さすがに会いたいよ…。俺達はただの兄弟じゃないのに…。
兄者に好きだと言われて、俺もずっと好きだったから恋人同士になった。一生この想いは胸に秘めたまま、誰かと結婚して、子どもと一緒に生きていくと思っていた。
でも、お互いに思い合っていたんだ。やっと恋人同士になれた。それだけで最初は嬉しかった。でも、こんなに会えないなら兄弟のままの方が辛い気持ちにならなくて済んだんじゃないかって、そう思ってしまう。
今日も一人でご飯を食べて、一人で眠るんだろうなぁ…。私と仕事どっちが大事なの?って聞く女性の気持ちがわかる気がする。
メッセージのやりとりも毎日同じ。
『今日も遅くなる。』それだけ。
もっと、会えなくてごめんとかないの??
…それとも、会いたいって思ってるのは俺だけなのかな……。
喉の奥がギュウッと締め付けられたように痛くなり、涙が出そうになる。それと同時に、兄者が仕事を頑張っているんだがら会えなくても仕方ない、メッセージも忙しくて短文しか送れないんだと思えない自分に嫌気が差す。
気持ちを紛らわすためにテレビをつけた。すると、お笑い番組がやっていて、集中して観ているうちに少しずつ気も紛れてきた。シャワーを浴びて、寝る前に映画を観ていた。1時過ぎになって、明日も仕事だし寝ようと思っていた。
その時だった。
ガチャ
リビングの扉が開く音がして、目を向けた。
そこには俺がずっと会いたかった人…兄者が立っていた。
「兄者……。」
「……ただいま。まだ、起きてたんだな。」
疲れた顔をしているけど、笑っている兄者を見て胸がキューッとなる。
会いたかった…やっと会えた…。
でも、抱きつきにいけなかった。疲れているからくっつかれると鬱陶しいと思われるかもしれない。兄者に冷たくあしらわれたら、また何日も会えない中、俺は俺を保てるだろうか…?
下を向いたまま、何も言えずにいると、兄者が俺に近寄り、抱き締めてくれた。
「っ!!!……兄者…。」
「はぁ〜〜……癒されるわ…。」
?!
あ、兄者がっ…!俺を抱き締めて…!癒される!?
とても兄者とは思えぬ言動ばかりで戸惑っていた。
「…会いたかった。やっと会えた…。いつもさ、弟者に会いたくてタクシーで帰って来てるんだけど、間に合わなくて…。良かった、今日は間に合った…。」
俺のことをさらに強く抱き締める。俺も兄者を抱き締め返すと嬉しそうに耳元でフフッと笑っていた。
「ごめん…最近本当に忙しくてなかなか会えなくて。寂しい思いしてるんじゃないかって仕事中もずっと弟者のこと考えてる。」
兄者がこんなことを思っていたなんて…。いつも強気で何でもこなす頼れる俺の兄貴。でも、兄者も俺に会いたいって思ってくれていた。俺のことを考えていてくれた。俺は俺が思っているよりずっと兄者に思われているんだってわかった。それだけで十分幸せだ。
「……兄者がそう思ってくれてるってわかったから、俺も兄者のこと待つよ。」
顔を上げ、兄者に笑顔を向ける。
「兄者にこんなに思ってもらえて、本当に嬉しい。幸せだ。」
「…こんなんで幸せだったらもたないぞ。」
兄者に顎を上げられ、久しぶりにキスをした。
キスは一回では終わらず、何度も、そして舌を絡ませ、兄者のことしか考えられないようにしてくる。
「んっ…あに……んん…」
唇が離され、再び俺を見つめる兄者。
俺は少しだけ息が上がり、頬が赤くなっている兄者に見惚れていた。
兄者も疲れてるから、これ以上はダメだ。そう言い聞かせているけど、もっとしてほしいと欲求は高まるばかりだ。
「今日は一緒に寝たい。」
俺の心の声が漏れてしまったのかと思った。兄者が全く同じことを言い出した。
「…でも、疲れてるんじゃ…」
「疲れてるけど、でもそれ以上に弟者と一緒にいたい。それに、弟者と一緒にいたら疲れも吹っ飛ぶ。」
兄者はずるい。いつもは冷たいのに…。俺の心が弱っていることをわかっていたかのように、優しくて俺がほしい言葉をかけてくれる。
やっぱり、兄者以外に俺をこんなにわかってくれている人はいない。
「俺も一緒に寝たい。」
嬉しそうに笑う兄者を見ると俺も嬉しくなる。
「好きだ、弟者。」
「俺も好きだよ。」
もう一度唇を重ねた。
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