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そのなな
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トークショーは滞りなく進んだ。
下手に捌ければ入りと同じ顔ぶれのアテンドが既にいて、囲まれながら戻って控え室に入った。途端、どこか張りつめていた空気が溶けていって、身体が軽くなった。
「お疲れ様」
そう言ったコナミさんの声音から俺を気遣っているのが伝わってきて、あぁ戻ってきたと、ふにゃんとした笑みを返してしまった。
「……にしても、波瑠もイブに仕事だなんてねぇ」
「まぁ……コナミさんもね……」
メイクを落とすのを手伝ってもらいながら返事を返すも、仕事を終えた俺の頭の中は既に違うことでいっぱいで。
早く帰って蒼斗に会いたい。会いたい。会いたい。
「でもでもぉ、蒼斗くんに会えちゃったのはラッキーだったわぁ!」
「……え?」
蒼斗のこと考えすぎて聞き間違えた?
「蒼斗に……会ったんですか?」
「むふふー!本当目の保養だわぁ!」
コナミさんは本当に幸せだというように、溶けた顔をしてどこか違うところを見ている。こんなに嬉しそうなコナミさんは初めて見た。お気に入りのモデルに会ったってここまでじゃないのに。
「あ!俺も見かけましたよ!」
「え……」
「いやー"あの"アオトさんを生で見たら動けなかったっすよー」
追い撃ちをかけるかの如く飛んできた新人くんの言葉に俺の中で黒い何かが湧き始めた。
待って。どういうこと。俺まだ会ってない。
「……いつ」
冷たい声になっちゃったのは許して欲しい。
「「さっき」」
片や意気揚々と、片や語尾に音符マークが見えるようなテンションで端的に返された。
「へぇ……さっき……って、さっき!?」
「そうよ!」
さっきってことは……。
「蒼斗が……来てる……?」
こんなところに?イブにわざわざ?誰と……?
じわじわと広がる何かに急かされるようにスマホを手にして蒼斗の番号を呼び出した。
ワンコール、ツーコール……10回数えたところで電話を切った。
ダメだイライラする……。
一昨日から会えてないのが地味に堪えて、ちょっとしたことで気が立ってしまう。
「今掛けた相手蒼斗くん?」
落ち着け。八つ当たりは良くない。
「……そうです」
出来るだけいつもの緩い声音でコナミさんに応えるもコナミさんには引っ掛かったらしい。
「直接言ったらどうかしら?」
思わず睨んでしまった。声を出さなかっただけ褒めてほしいくらい。
「急ぎの用なら、だけど」
俺の視線なんて気にもとめず、コナミさんは真っ直ぐ俺を見ていて、その視線に促されるように少しずつ冷静になっていく。
俺的には急ぎだけど……そもそもどこにいるのか分かんないし。
「そろそろフォトブース再開してると思うわよ」
「……?」
なんでフォトブース?
クリスマスのオブジェに蒼斗が興味を持つとは思えない。蒼斗は専ら撮る側だ。
「あ、でも始まっちゃってたら蒼斗くん撮ってるから無理かしら」
「蒼斗が撮ってる?」
「あ!そうよ!客として撮ってもらえばいいんじゃない!波瑠はゲストだったんだし、少し位もたもたしたってみんな許してくれるわよ~!」
名案だとばかりにはしゃぐコナミさんの話に俺は全くついていけてない。
「ほらほら!そうと決まれば行ってきなさ~い!」
「ちょ、待っ……えぇ!?」
どこか噛み合わないままコナミさんに背中を押され、俺は控え室を締め出された。
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