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そのにじゅうさん
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ゆっくりと浮上した意識の中で最初に感じたのは違和感だった。
体に掛かる布の重さは慣れ親しんだものではないし、引き上げ顔を覆ってみても感触が違いしっくりこない。
ただ、違和感だらけの中で抱き締められている感覚だけはよく身体に馴染んでおり、温かなそれに身体を寄せた。
あー……好きだ。
もう少し微睡んでいようとしたところで、温もりが小さく震えた。
「ふふっ」
「はる……」
「おはよう?」
波瑠は既に起きていたらしい。
「……はよ」
怠さはない。二日酔いもない。身体も不快感なく綺麗だ。
「もう少し寝る?」
「何時……」
「9時半くらい」
思ったより早起きだ。
そうはいってもここで寝たら最期だと思い、ゆっくりと身体を持ち上げスプリングのきいたベッドに座る。
ふわふわする頭でゆらゆらする身体に意識を委ねていれば、「蒼斗」とどこか遠慮したような声で呼ばれた。
「んー……?」
「……もう一泊、する?」
「それは……」
つまりどういうことですかね、波瑠さんや。
いまだベッドに横たわる波瑠をじとっと見つめれば俺の言いたい事が分かったようで、波瑠は飛び起き両手や顔を忙しなく左右に振りながら、慌てた様子で言葉を紡いでいく。
「あ、いや!違う!違うよ!?」
「何が」
「するって別にヤるんじゃなくて!」
「ほぉ……」
「本当!違う!ただ、このまま、ここでだらだらするのも、良いな、って……」
だんだん声が小さくなっていきながらも必死で言葉を並べる波瑠が可笑しくて、身体の奥が温かくなる。
「そうだな。でもしない」
「うへっ!?」
「腹減った」
「腹ッ……うん、そうだね!お腹空いたね!」
へらっと笑った波瑠をベッドに残してカーテンを開ければ、冬の優しい陽の光が室内に広がった。
昨日の朝には無かった温かさを感じるのは、きっと波瑠がいるから。
「蒼斗、水」
「サンキュ」
いつの間にか隣に立った波瑠から差し出されたミネラルウォーターを受け取り蓋を捻る。パキッという小さな音がやけに新鮮な響きに聞こえた。
昨日飲み込んだ波瑠の気持ちを知るのは、きっと今じゃない。気になるし、先延ばしにするのは良くない気もするが、こういうのはタイミングもあるだろう。
今は日没までのクリスマスが先だ。
聞きたいことは喉を通っていく水とともに飲み込んで閉じ込めた。
とりあえず……お決まりの言葉から――。
「波瑠」
「ん?」
「メリークリスマス」
Fin.
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