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- 本当の理由 -
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真っ黒の部屋の中に一つの灯りが灯った。部屋の真ん中、蝋燭を一つつけただけの小さな光。その周りを3人で囲んでいた。奏、晶、縷亜の3人、向き合うように座るも少しの間無言でいた。
「...、で、 枢木さんだっけ?奏の後でも追ってきたの?」
「そうですね。ここでずっと監禁は可哀想だと思いまして...、明るいとこに行って、美味しいもの食べて、お出かけでも一緒にしようかとしていたのですが、こんなに酷い人に捕まっていたとは...、」
“ 可哀想に...、こんな痩せちゃって、お腹も空いてるんじゃない? ” と付け足しながら自分の方を見てくる縷亜さんを横目に、何も言わなくなってしまった晶さんをずっと見つめる。ここにいるのは誘拐犯とストーカー、そしてそれらの被害者。この状況では何も言えずにただただ二人が話す様子を見ていた。
「晶、さんでしたっけ...?奏くんをここに連れてきて、したかったことって何なのですか?」
縷亜さんに引き寄せられ、頭を撫でられながらも先程から黙ってばかりの晶さんを見る。俯き、何も言わないと言うように口を瞑ったままでいる。
_ ” 幸せを知ってほしい “
この前、二人の時に晶さんが言った言葉の中の一つ。ただそれを言いだけなのに何故言わないのかと無言のまま小さく首を傾げる。ずっと頭を撫でていた縷亜さんはそれに気づき、 “ 本音を言ってもらえるまで待ってね ” と耳元で小さく言ってくれた。
「...、晶さん、そのまま無言のままなら、奏くんはこちらで預かるので。こんなとこに置いておいたら、餓死でもしちゃいそう、」
ここに来てから殆ど何も食べていない自分の体は痩せ、縷亜さんが抱き上げた時に驚くくらいであった。 ” 行こっか “ 、そう言われ、落ちないように首元に抱きつつゆっくり扉の元へ歩く縷亜さんにそのまま大人しく従っていた。その時後ろから名を呼ばれた。うっすら聞こえるように小さい声で。
「...、奏を、置いていけ。」
「どうして?このまま餓死にでもさせる気?」
「...、金が、欲しいんだよ。宝石いくらでもあげるって言ってた、ちゃんと相手からの承認ももらってる。さっさと返せ。」
二人の話を聞いている内に晶さんはやっぱり宝石目当てだったんだと思った。そして、縷亜さんもきっと宝石目当てなんだろうと思い、立ってもふらつくであろう足で、縷亜さんからの腕から降り、ゆっくりと離れる。
「やっぱり宝石目当てか。」
「やっぱりって何だよ...、本人からの承認も貰ってんだよ、枢木さんは持って帰ってどうするの?やっぱり宝石目当て?幸せを知ってほしいとか言ったけどさ、そんなの無理でしょ?所詮、誘拐犯だよ?教えられるわけないじゃん、嫌がられるだけだろうし...、そしたらさ、涙が宝石に変わるの思い出して、利用しようとしてたんだけど、枢木さんが邪魔しに来ちゃって...、」
二人が話しに夢中になっている中、蝋燭の光が届いていない扉まで行き音を立てないように開ける。ひさびさに見た夜の外の景色。それに気が引かれないように感情を抑えつつ、外へと出れば、そのまま玄関へと向かう。
「...、宝石目当てなの、わかってたから......、信じてなんか...、いないから...、」
この人なら大丈夫、そう思っていた晶さんの言葉。それでも本音は宝石目当て。心のどこかで信じてしまっていたのが悔しく、ぽたぽたと涙を流せば床に落ちる前に色とりどりの宝石に変わっていた。
_ ” これがあれば、僕なんかいらない。 ”
_ “ 宝石があれば、この人たちは満足する。 ”
__ “ もう、僕なんかいらない。 ”
泣きながら玄関へと向かい、靴も何も履かずに裸足のまま外へと出る。ひさびさに見た外の景色。道路を見ればずっと車が動いているという大きめの道路。ここならすぐにいける、と道路の近くまで向かう。大型トラックが見え、ゆっくり道路に出る。そして__ 。
_ “ 僕の本音は、できることなら幸せというものを知りたかった。涙が宝石に変わるのも、1日で記憶が消えるのも気にせずに、普通の生活を送りたかった。晶さんと縷亜さんがいる部屋の前に沢山の宝石を置いた。大きいのから小さいのまで全て。だからもう、いらないから...、僕はもういらない子だから、さよならをしたい。 “
痛々しい音がし、大型トラックとの衝突事故。奏は遠くまで飛ばされ、頭を打ち付けてしまい意識不明の重体。晶と縷亜はこれからどうするのか。
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