アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
プロローグ
-
ルシエルは、自分の身に何が起こっているのか分からなかった。
あ…と思った時には、その人の顔が目の前にあったのだ。
いや、目の前、と言うより……密着していた。
身体が。
唇が。
「…っ」
びっくりしすぎて、動けない。
なにより何が起こっているのか、頭で理解出来なかった。
--キスされている。
と、ルシエルの理解がようやく追いついた時、唇が微かに震えた。
それに反応するように、目の前の相手が唇をそっと離す。
けれど、身体は離れていかない。
その人の身長はルシエルより頭一つ高く、ぱっと見は細身に見えるけれど、服越しに感じる身体は逞しさがあった。
月夜に輝く金髪の髪はふわりと後ろに撫で付けられていて、清潔感を感じる。
顔は…仮面をつけているために伺い知ることは出来ない。
が、その雰囲気は自信に満ち溢れていて……おそらく良い顔を隠し持っているのだろうと思わせた。
そんな相手と、とても長い時間見つめあった。
いや…実際はほんの数秒だったが、ルシエルにとってかなり濃厚な時間だった。
ルシエルの身体が何かを訴えようとピクリと反応を示す。
(……っ!離れなきゃ!)
ようやく頭がその事に気付いて、相手の胸を押し退けようとした瞬間、再び唇が塞がれた。
先程の探るようなものではなく、意思を持って求められているようなキス。
「…んっ」
思わず漏れ出た自分の声に驚く。
(なに…これ。なにこれっ!)
ゾワリと何かが全身を駆け巡る感覚に我慢出来なくなり、今度こそ相手の胸を力一杯押した。
身体が離れたその隙に、ルシエルは一目散にその場から逃げ出した。
屋敷へと帰る馬車の中、ルシエルは自分の身体を抱いて震えていた。
唇に触れると、先ほどの事を思い出して身体が疼く。
(男に…っ、キスされたっ!!)
家族以外からのファーストキスを、まさか同じ男に奪われるなんて!!と、うな垂れる。
身体が震えるのは、ショックのせいか、寒さのせいか。
顔は熱くて、背筋はゾクゾクするのを感じた。
男同士でキスなんて!と思っているのに……
何かが頭の中にモヤのようにかかってその感情がハッキリと表に出ず、ルシエルは苦しんだ。
謎の感情が出ては消え、出ては消え、と忙しくルシエルの頭と心を揺さぶる。
家に帰ってから、着替えもそこそこに倒れるようにベッドへと潜り込んだ。
それから一週間、ルシエルは原因不明の熱にうなされることとなる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 166