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前世の記憶 …1
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ルシエルは、王都の隣の国内最大領地のルーズベルト領に住む、ルーズベルト侯爵の長男だ。
ルシエルには双子の姉がおり、名前をミシェルと言う。
ルシエルとミシェルは、現ルーズベルト侯爵が結婚して10年目にしてようやく出来た子供達で、二人はそれはそれは大切に育てられた。
両親だけでなく使用人達にも甘やかされた結果、たいへん我儘な双子に育った。
そんなルシエルは、生まれた時からこの世の理をなんとなく理解できた。
5つの時につけられた家庭教師からは神童とチヤホヤされ、さらに調子に乗る。
ミシェルと一緒に使用人を顎で使ったりと、我儘放題し放題の毎日を過ごしていた。
そんな二人を、使用人は誰も咎める事が出来なかった。
二人の両親が愛情をたっぷり注いでいることを知っていたし、なにより二人がたまに見せる天使のような笑顔に皆やられていたからだ。
ルシエルとミシェルは、フワフワの金髪に綺麗な紫の瞳を持つ。
唇と頬が桃色に上気する様は、まさに天使。
その笑顔を見るために、我儘も多少は許してしまうのだ。
双子が8つになったある日。
ミシェルに「読んでみて!」と押し付けられた恋愛物語の内容に、ルシエルは衝撃を受けた。
その内容は、家の都合で結ばれなかった二人が、生まれ変わって来世で結ばれるという物だった。
- 生まれ変わり -
ルシエルはその部分を何度も何度も読み返した。
そしてぼんやりと気付く。
自分は、前世の記憶があるのではないか、と。
なぜ太陽は東から昇るのか。
なぜリンゴは木から落ちるのか。
降った雨はどこへ行くのか。
そういった事を誰に聞くともなく理解しているのは、前世で得た知識を忘れずに覚えているからであろうと。
その衝撃からしばらく後、ルシエルが街で馬車に轢かれそうになるという事故が起こった。
目の前で馬車は止まったが、その光景は、何か不思議な光景と重なってルシエルの身体を走り抜けた。
何か大きな箱が走り回る映像。
見上げるほど高い建造物。
何と表現して良いか分からない物達。
この世界では見ない光景がグルグルと頭の中を駆け巡る。
幸いにして転んだ際の軽傷で済んだが、ルシエルは一週間ほど熱にうなされた。
怖い思いをしたせいだろうと周りの大人は思ったが、そうではない。
ルシエルは頭の中の膨大な情報や記憶と戦っていた。
そしてその情報を自分のものとして飲み込むことができた時、ルシエルはようやく目覚めた。
前世の記憶と、今世の記憶を持って。
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