アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
そして、事件は起こる …1
-
ルシエルとミシェルは14歳になり、社交デビューを果たした。
二人は、それはそれは美しく成長した。
幼い頃は親しい者でも見分けがつかないほどそっくりだった二人も、徐々に変化が現れていた。
最大の違いは髪型で、ミシェルはフワフワの金髪を綺麗にカールさせた二つ結び。
ルシエルはカールを活かした少し長めのショートヘアにしている。
体型も、ミシェルがささやかに丸みを伴っている以外は、ほぼ変わりなかった。
顔付きはミシェルが少し尖った感じで、ルシエルが柔らかい感じなのだが、この違いはミシェルが最近化粧を覚えたせいでもある。
裏で「性格の違いが顔に出てきている」と言う使用人もいるとかいないとか……
「ルゥ〜?お願いがあるんだけど…」
そんなある日、上目遣いで手をモジモジさせながら、ミシェルは読書中のルシエルの側に立った。
その様子を見たルシエルは身構えざるを得なかった。
ミシェルが改まった感じで「お願い」をする時は、大抵ロクなことがないからだ。
「なに?どんなお願い?」
ミシェルはキョロキョロと周りに誰もいないのを確認してから口を開く。
「単刀直入に言うとね、パーティに出席して欲しいんだけど」
「パーティ?」
--こりゃまた面倒くさそうだ。
と思いながらも、可愛いミシェルのお願いを無下にはできないルシエルは、いつものようにミシェルの話に耳を傾ける。
「うん。あの、実はね、友達からあるパーティの招待状を無理言って取ってもらったんだけどね。えーと、なんて言うか、そのパーティに行けなくなってね…」
「え?どうして?」
「それがね…今度、王都に歌劇団が来るんだけど…その…その取れたチケットの公開日が、パーティの日と重なって…私、観劇の方に行きたくて…」
「歌劇団って、……あ!前に言ってた、あの女だらけの…」
「そう!それよ!宝箱歌劇団!!」
ミシェルは最近、女だけで構成された歌劇団にハマっている。
街によく出かける侍女からその話を聞き、その歌劇団の姿絵が描かれた案内を見てからと言うもの「本物に会ってみたい」と目をキラキラさせながら遠くを眺める日々が続いていた。
ルシエルもその姿絵を見せてもらった(無理矢理見せられたと言う方が正しい)が、そこには騎士の格好をした人物が描かれていた。
前世で似たような歌劇団があった事を思い出す。
描かれているその姿は凛々しく、男のようだが、中性的な顔がなんとも妖艶な雰囲気を醸し出している。
ミシェルはその姿に一目惚れしたようであった。
そしてこの度、この王都にその歌劇団が来ると決まった時には、ミシェルは飛び跳ねんばかりに喜んだ。
入手困難なそのチケットを、本来の(というか、昔の)ミシェルなら侯爵の名前を使って取るところだが…もはや恋する乙女なミシェルは自分の力で取ってこそ!とわざわざ並んでチケットをゲットしたのである。
まぁ、並んだのは彼女の侍女であるが。
「うわ!!やったね!ミィ!」
「そう!そうなの!やっと会えるの!アンドレ様!」
嬉しそうに微笑むミシェルに、ルシエルもつられて笑顔になる。
「なら…パーティは無理だね。…でもどうして僕が行くの?欠席じゃダメなの?」
「うん。その…無理言ってお願いしたパーティだから、行かなかったらお友達に申し訳ないし…。次からもう誘ってくれなくなるかも知れないし……。それに、病気だと嘘をついて、お見舞いにでも来られたら困るもの」
「あぁ……」
社交デビューしたミシェルは、最近お茶友達が出来た。
そのうちの一人からあるパーティの話を聞いて、どうしても行ってみたくなり、無理言って招待状を入手したのだ。
そんな風に入手した招待状なので、使わなければその友達との関係が悪くなるであろうとミシェルは心配していた。
社交界では、一度信用を失うと取り戻すのは難しい。
大袈裟に言えば、ルーズベルト侯爵の名前に関わることにもなる。
そこまで考えを巡らせてから、ルシエルは溜め息を吐きながら頷いた。
「仕方ないなぁ。ちょっと顔出す程度で良いなら…良いよ」
「わぁ!ホントっ?ルゥ、大好き!!」
そう言ってガバッと抱きついて来たミシェルをルシエルは優しく抱きとめた。
そう。
そのパーティがどんなものかも知らずに…
そして、パーティの当日、ルシエルは愕然とするのである。
「えっ?なんで?なんでドレス?」
突然ミシェルの部屋に呼び出されたルシエルは、鏡の前でドレスを合わされそうになって驚いた。
「え?今日のパーティのよ?ルゥと私は背丈も変わらないし、私のサイズので良いでしょ?とりあえず着てみて、胸の辺りとかコレットにどうにかしてもらうから」
ちなみに、コレットとはミシェルの侍女である。
「いやいやいや…何で?僕は自分の着て行くよ?」
「……あれ?言わなかった?『私』の名前で取った招待状だから『私』が行かないといけないのよ?」
つまり、ミシェルのフリをして行くという事である。
「えっ?無理でしょう⁈」
「大丈夫よ。仮面パーティだから」
「仮面パーティ⁈いや、そうは言っても!」
「ルゥはまだ声変わりしてないし、可愛い顔してるし、大丈夫よ」
「ダンスとか無理だしっ!」
「壁の花で十分!仮面パーティだから、煩わしい挨拶なんてないらしいし。お友達にも挨拶は必要ないわ。それに大概は、無礼講で許されるって。ね?ほんのちょっと顔を出して、後は気分が悪くなったとかですぐに帰ればいいわ。…お願い!今さら無理だなんて言わないで!!」
「でも…」
「今度、ルゥのお願いなら何でも聞くわ!でも、どうしてもアンドレ様には会いたいし、かと言ってお友達の顔も潰したくないの。こんなこと頼めるの、ルゥしかいないし…それに今後こういう事がないようにするから!一度だけ!ねぇ?お願い!」
余程、その歌劇団のアンドレとやらが好きなのだろう。
目に涙を浮かべて必死になる様を見たルシエルは、もう折れるしかなかった。
「はぁ…ちょっとだけたからね?招待状出して、会場に顔出したら、直ぐに帰るからね?」
「えぇ!えぇ!十分よ!ルゥ!ありがとう!…じゃ、早速これ着て!」
こうして、ルシエルはミシェルのフリをして…つまり、女装をして仮面パーティに、行くことになったのである。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 166