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そして、事件は起こる …2
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今回、ルシエルが行くことになった仮面パーティは、王都の外れで行われる最近人気のダンスパーティだ。
貴族達が身分の上下に関係なく、異性とダンスができる事が売りである。
仮面をつけていることにより、身分だけでなく容姿も隠す事が出来るので、普段目立たない人達もここでは中央で堂々とダンスが楽しめるのだ。
社交デビューをして間もない子達も、勉強のために出席している者が少なくないとか。
もちろん安全上の理由で、入場の際はきちんと身分を確かめられる。
仮面パーティではあるが、受付では招待状と身分を確認される。
受付が本人を確認することにより、問題を起こした時の対策も取られている。
そのため、仮面パーティながら誰が出席したかは主催者側には筒抜けであるので、今回ミシェルの招待状を持って、ミシェルのフリをしたルシエルがパーティに行くことになったのである。
「はぁ…」
パーティ会場へと向かう馬車の中で、ルシエルは盛大な溜め息を漏らした。
向かいにはミシェルの侍女のコレットが座っている。
「コレット。僕、ホントに変じゃない?バレない?」
今日何度目かの同じ質問を、ルシエルはコレットに投げかけた。
「誰が見ても立派なお嬢様でございますよ!喋り方さえ変えれば、近しい者でない限り、ミシェル様と間違われるでしょう」
そしてコレットも、今日何度目かの同じ答えを返す。
コレットの言う通り、ルシエルは完璧な貴族の娘に化けていた。
小さな頃はそっくりだった二人も、歳を追うごとに多少なりとも変化が現れた。
だがまだ14歳という成長過程では、はっきりと男女の差は見られない。
と言うより…ルシエルは男としてはとても可愛らしい容姿をしていたのだ。
フワリとした金髪に、自然とまつ毛が上を向いたぱっちり二重の紫の瞳。
白い肌は滑らかで、上気すると、頬がピンクに染まる。
これから伸びると信じている身長は、今はミシェルとほぼ変わらない155センチ程。
美人の母親の容姿をたっぷりと受け継いだルシエルを女として磨くのを、侍女達は楽しんだ。
その結果、ミシェルよりも可愛らしく(これは侍女達の中だけで交わされた評価)出来上がった。
地毛と同じ色のウィッグはハーフアップで軽くカールさせている。
オフショルダーのシンプルな水色のドレスは、胸のところにリボンがあしらっており、膨らんだスカートの裾から見える白いレースはとても可愛らしい。
ルシエルを磨き上げていた時の楽しさを思い出して、コレットはこっそりと口端を上げた。
窓の外に、これから行く舞踏会場が見えて来る。
「そう言えば…ごめんね?」
「何がでございますか?」
「本当は、ミィと…ミシェルと一緒に観劇に行きたかったんじゃない?」
使用人の自分に向けられたルシエルの心遣いに、コレットは微笑んだ。
「勿体無いお言葉でございます。いいえ。私はこうしてルシエル様とご一緒出来て嬉しゅうございます」
コレットの言葉に、何一つ嘘はなかった。
確かに、滅多に見られない噂の劇団も気になるが…あちらよりもっと希少な現場に立ち会っているのだ。
向こうは女が男を演じるが、こちらは男が女を演じている。
それもリアルに。
なにより、ルシエルはコレット達の傑作作品だ。
仮面をつけてても、その透き通るような白い肌や愛らしい頬や唇は隠せないだろう。
しかも、別の性別を演じている為なのか、ミシェルには無い妙な艶かしさが漂っている。
今夜のルシエルは間違いなく、ダンスの相手として引く手数多だろう。
それを想像して、コレットは内心萌えまくっていた。
禁断の恋なんかが始まっちゃったらどうしよう!ウフフ!な具合である。
ただ、残念なことに、ルシエルは今日は壁の花で終わるらしい。
それからすぐ、ルシエル達は会場に到着した。
受付を問題なく済ませ、渡された仮面を着ける。
仮面は顔の上半分を覆うもので、ルシエルのパッチリとした瞳は隠されてしまったが、バラ色の唇は愛らしさをちゃんと主張している。
そんなルシエルの顔を見て、コレットはうんうんと頷いたが、ルシエルにはなんの事か分からなかった。
それからダンスホールの入り口でコレットと別れる。
本当はすぐにでも帰りたいが、あまり早く帰っても悪目立ちするので、30分後に入り口で落ち合う事となった。
ダンスホールに入ると、すぐに何人かの視線を感じた。
(うわ!なんか怖い!早くなんか手に取ろうっ!)
ホール内は、ルシエルが知っているどのパーティよりも熱気に包まれていた。
ルシエルは軽食を振舞っているテーブルを見つけると、早足でそちらに向かう。
皿を手にしている人に話しかけるのは、マナーが良いとは言わないからだ。
ちなみに、グラスを手にしていれば、ダンスにも誘われ難くなる。
今日のルシエルは、常に皿を手にしている作戦だった。
……が、いざ食べ物を取ってみれば…初めてのコルセットに苦しめられて、すぐにお腹いっぱいになってしまった。
しばらく空になった皿をもて遊ぶ。
(うーん。何も乗ってないお皿をずっと持ってるのも変だよな……。かと言って、新たに食べ物をもらっても食べれないし。待ち合わせまであと10分くらいかな?仕方ない、飲み物に変えるか…)
そして、ルシエルが皿からグラスに持ち替えた途端、待ってましたとばかりに男達が話しかけて来た。
「こんばんは、レディ。楽しんでるかい?」
「え、えぇ…」
(げっ。なにがレディだよ。キモっ)
「良かったら、私と一曲いかがですか?」
「えっ?」
グラスを手にしているのに、ダンスに誘われた事に驚く。
実は、ルシエルが思っていた以上に、これは無礼講なパーティだったのだ。
「いえ、ごめんなさい。どうも人に酔ったみたいで気分が優れなくて…」
「そうですか…残念です。では、次の機会に…」
そう言って、男はあっさりと離れて行って、すぐに別の女性に声をかけていた。
(なんか…すごいパーティだな。皆、ギラギラしてて…)
そんなことを考えていたらまた声をかけられた。
体調が悪いと言えば、大抵の男は去って行ったが、何人目かに声をかけて来た男は、それでは引かなかった。
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