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そして、事件は起こる …3
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「ご気分を悪くされたのですか?大丈夫ですか?」
「えぇ…しばらくすれば大丈夫と思いますので…どうぞお気になさらず…」
「いえ、そう言われましても…。そうだ!少し外の風に当たりましょう。私が付き添いますので」
パーマ頭のその男は、そう言ってルシエルの背を押した。
「えっ?あ、あの、いえっ!」
急な展開にアタフタしていると、あれよあれよと言う間にルシエルはバルコニーへと連れ出された。
バルコニーへのドアを開ける瞬間、パーマ男はルシエルの肩をグイッと抱く。
「!!」
それまで優しさを見せていた男が、急に野獣のような雰囲気をまとった。
バタンとドアが閉まったのが、不幸への合図のような気がして、ルシエルは一気に青ざめた。
バルコニーは室内とガラスの壁で隔たれており、室内から漏れ来る照明の灯りのみで薄暗い。
結構広さのあるバルコニーの奥には手すりの切れたところがあり、そこから庭へ出られるようだ。
だが、庭へは灯りは届いておらず、その様子を伺い知ることは出来なかった。
パーマ男はどんどんドアから離れて行く。
つまり、どんどん灯りから遠ざかる。
(ヤバい!なんかヤバい!)
身の危険を感じたルシエルは、ここに来てようやく逃れようともがいた。
すると、男がさらにルシエルを抱き寄せた。
「あのっ、やめて、くださいっ!」
「え?ここまでついて来て、それはないよ?」
男がルシエルの耳元で囁く。
ルシエルは恐怖で、それ以上声が出なくなった。
(気持ち悪い!……怖い!怖い!!)
逃げようとするルシエルを手すりに追い詰めたパーマ男は、ルシエルの唇を奪おうと顔を近付けた。
逃れようにも力が敵わず、ルシエルがギュッと目をつぶった時だった。
「失礼、お取り込み中かな?」
パーマ男の背後から、別の男の声がした。
その声によって、ルシエルに覆いかぶさるようにしていた男が身体を離す。
見ると、月夜に輝く金髪が印象的な男が立っていた。
「いえ…彼女が気分が悪いと言うので、様子を見ていただけですよ?」
パーマ男がシレッと答えた。
「そうか…いや、まさかこのパーティのルールも知らずに、無理矢理ご令嬢を襲おうとしていたのかと思って…」
「ま、まさか!そんな訳ないだろう!」
男が自分を囲っていた両腕を手すりから離したのを見て、ルシエルは大きく息を吐いた。
(た、助かった…)
吐き出した息が震えている事に気付いて、ルシエルは自分が震えている事を知った。
「気分が悪いなら、医務室へ行くべきだと思うが?」
「そう…そうだな。ははっ。そうさせてもらおう」
そう言って、パーマ男は再びルシエルの肩を抱いた。
(えっ?)
助かったと思ったが、どうやらそうではないようだ。
パーマ男はルシエルを連れて、会場の方へと足を向けた。
再び恐怖に襲われたルシエルは、男の力に抗えない。
何か言葉を発したいのに、口から漏れるのは震える息だけだった。
金髪の男の横を通り過ぎる時、ルシエルは視線を感じてそちらに目を向けた。
仮面を付けているのでこちらの表情は伝わらないかもしれない。
それでもルシエルは必死に、目で助けを訴えた。
「……待て」
仮面と暗闇のせいでその視線は届かないと思われたが、金髪の男はルシエルの視線に応えるように、二人を呼び止めた。
ルシエルにはその声が天の助けのように感じた。
「……何か?」
「君は……確か、婚約者がいただろう?」
「……は?」
パーマ男が狼狽えたのが、ルシエルの肩越しに伝わってきた。
「こんな事をやっていると知ったら、婚約者殿は悲しむだろうなぁ。それに、君の出世にも響くんじゃないか?何せ婚約者殿の父上はオーキッ…」
「うわあああ!何をっ⁈何を言っているのか!……っ!そうだ!急用を思い出した!し、失礼するっ!」
金髪の男とパーマ男は知り合いなのだろうか?明らかに動揺した様子のパーマ男は、慌てて会場へと戻って行った。
パーマ男が見えなくなってから、ルシエルはようやく息をつくことが出来た。
ゆっくりと、金髪の男を振り返る--つもりが、足が震えた上に慣れないヒールのせいでバランスを崩した。
「わ…っ!」
転ぶ!とルシエルは身構えたが、身体が地面に叩きつけられる事はなかった。
ゆっくりと目を開くと、先程の金髪の男が、ルシエルの腕を掴んで支えてくれていた。
「あっ!す、すみません!ありがとうございます!」
「大丈夫か?」
「……は、いっ」
ルシエルは一瞬その男の声に聞き惚れた。
助けてもらった為にフィルターがかかっているのか、もしくは月明かりのせいなのか。
とてもカッコ良く見える。
胸が高鳴るほどに。
不意に、自分を支えてくれている男の手に縋りたい衝動に駆られて、ルシエルは慌ててその男の手を払った。
「〜〜っ!!」
「あぁ…失礼した」
ルシエルのその行動は助けてもらった相手にする態度ではなかったが、咄嗟のことながら淑女の腕を取った事に対してその男は謝ってくれた。
その誠実さに、ルシエルの胸はさらに高鳴った。
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