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悪役令嬢の弟に転生したようです …1
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マモルがハマったゲーム「恋の花」は、主人公が何かしら花に関わりながら攻略対象を落として行くストーリーだ。
主人公は、平民の娘。
名前はマリー。
マリーは、城下町で母と二人、花屋を営んでいた。
花を育てるのが好きで、教会の敷地で子供達のために花を育てたりもしている。
たまに貴族からの依頼で、庭の手入れを手伝ったりもしていた。
気立てが良く、町の皆の人気者だ。
ある日、貴族が花屋にやって来て、マリーを養子として引き取りたいと言う。
実はマリーは、昔侍女として働いていた母とその貴族との間にできた子供だったのだ。
この度、その貴族の子供が亡くなり、跡継ぎが必要になったことから、マリーに白羽の矢が立った。
マリーは、養子を受け入れれば母にも楽をさせてあげられるという話を聞き、養子の話を受け入れる。
養子になった後、マリーはそれまで通っていた学園の庶民棟から貴族棟へと編入する。
その学園で対象者と出会い、愛を育むと言う話だ。
対象攻略者は5人。
学園の先輩である第一王子
先生として学園に通う騎士
学園の医者
学者を目指す同級生
留学中の隣国の王子
その中でマモルが気に入っていたのが、第一王子のアルフレッドである。
気に入っていたと言うより、恋をしていた。
金髪に青い瞳の、イケメン。
強くて優しくてカッコいい王子様。
皆に慕われるアルフレッド王子が、(ゲーム内の)自分に甘えて来るのがたまらなく好きだった。
このゲームのラストは対象者毎に3通りのエンドがある。
ハッピーエンドは、恋人として結ばれる。文句無しのハッピーエンドだ。
ノーマルエンドは、友達以上の関係になれる。対象者によっては恋仲になれるが、あっさりとした終わり方。
バッドエンドは、攻略対象とは結ばれない。良くて友達の関係で終わる。
アルフレッド王子の場合--
ハッピーエンドは、アルフレッドと結ばれて、イチャイチャラストが待っている。
ノーマルエンドは、アルフレッドと仲良くなり、女の中では一番好きだと言ってもらえる。しかし、イチャイチャは無し。
バッドエンドは、友達止まりの寂しい終わり方だ。
「ウソ……だ」
目覚めたルシエルが最初に呟いたのは、そんな言葉だった。
大好きだった恋愛シミュレーションゲーム。
最初はPC専用のゲームだったが、人気が出て、モバイル版が発売される事になった。
その発売日が、マモルが事故にあった日だ。
仕事終わりに、家まで待てずに歩きながらスマートフォンでアプリをダウンロードしてゲームを始めた。
夢中になっていて、周りが見えていなかった。
自分に向かってくる車にも気付かなかった。
最後に覚えているのは、真っ赤に染まっていく景色と、その中で明々と浮かび上がるスマートフォンの画面。
(俺、死ぬのかな?……あぁ、アプリ消さなきゃ…こんなのやってたら、俺、死んでも笑われちゃうよ。……--。……せめて、最後に見るのが……アルフレッドとの、ハッピーエンド、画面だった、ら、良かった、のに……)
そんな事を考えた。
気がする。
だからか。
だからなのか?
ルシエルが今いる世界は、そのゲームの世界ととても似ている。
ゲームと同じ中世ヨーロッパのような雰囲気の世界。
お城や馬車があって、王子や姫、貴族等が存在する。
ルシエルがこれから通う事になる王立学園においても、庶民棟と貴族棟が分かれている事が、ゲームの設定と同じ。
そして、マモルの好きだった"アルフレッド王子"が、現実に存在していた。
アルフレッド・ローゼンクラウンが。
この国の第一王子として。
社交界で聞いたことのある名前で、ゲームの登場人物と一致する名前もある。
攻略対象の一人、隣国の王太子も存在している。
「う、あ…あ」
これはただの偶然だ。と、ルシエルは思いたかった。
一番認めたくない登場人物が、身近にいたからだ。
「ミ…シェル…」
そう。ミシェルはゲームの登場人物だった。
アルフレッドの婚約者として登場する。
つまり、主人公のライバルだ。
しかも悪役令嬢である。
主人公がアルフレッド攻略を選んだ場合……
婚約者のミシェルが登場し、主人公を虐める。
ハッピーエンドルートに入ると、ミシェルは主人公が王子のために育てていた王宮の薔薇園をめちゃくちゃにするストーリーが現れる。
それが罪となり、婚約破棄後、修道院行きとなる。
そして主人公がアルフレッドと結ばれる。
ノーマルエンドは、主人公を守るため、アルフレッドはミシェルの虐めを追及し、ミシェルとの婚約を破棄する。
バッドエンドでは、アルフレッドがミシェルとの婚約を破棄する事はない。が……
どのルートにせよ、アルフレッドはミシェルを愛してはいなかった。
心臓がバクバクとあり得ない音を立てるのを、ルシエルは聞いた。
なんてことだ。
ここが本当にゲームの世界なら……
ミシェルとアルフレッドの……いや、主人公とアルフレッドのエンドを見るために自分はここに生まれたのだろうか?
そう、思えて仕方がなかった。
他でもない、主人公のライバルのミシェルの双子の弟に生まれ変わるだなんて。
神様を恨まずにはいられない、ルシエルだった。
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