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学園生活の始まり …2
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久しぶりに見るアルフレッドの顔に、ルシエルは胸が高鳴った。
それと同時に、胸が掴まれる様な痛み。
「アルフレッド殿下がこちらを見ましたわ!」
アルフレッドはモテるのだと痛感させられた。
こんな状況を見て、ミシェルは大丈夫かと横目で確認したところに、さらに黄色い声が増した。
「きゃっ!こちらに手を振られたわ!」
「えっ⁈どなたにっ⁈」
ルシエルがアリーナに目線を戻すと、アルフレッドがこちらに向かって手を挙げていた。
誰に向かってなのか分からないが、微笑んでいるように見える。
その笑顔にさらに黄色い声が上がった。
こちらに歩き出そうとしたアルフレッドを、隣にいた黒髪の男性が止める。
2、3言言葉を交わしたあと、黒髪の男性がこちらを見た。
どうやら驚いているようだ。
その二人に、剣術の先生だろうか、白髪だが体格の良い男性が近付いて何やら話し始め、二人は再び兜を被って剣を合わせ始めた。
そんな二人の様子を、周りの女生徒と同じように見守っていたルシエルとミシェル。
「今、どなたに手を振られたのかしら……」
「あら、見て。見慣れない方がいらっしゃるわ」
「ほんと。どなたかしら?」
そんな会話が聞こえて来て、ルシエルがそちらの方を向くと、どうやら自分達の事を言っているのだと気付いた。
その見定めるような視線に、ルシエルは背筋が冷えるのを感じた。
ルシエル達のルーズベルト家は侯爵の地位を賜っており、王国内にも四家しかおらず、地位は高く、大概の貴族に怯む必要などなかったが、そんな事も忘れるくらい、恋する女性達の目は怖かった。
「ミ、ミシェル、そろそろ帰ろ?」
「……えっ?あ。え、えぇ。……そうね」
アリーナを食い入るように見つめていたミシェルだったが、ルシエルの言葉をあっさりと受け入れ、周りの目線にも気付かない様子で腰を上げた。
「ミィ?」
「え?何?」
「う、ううん。なんでもない。行こ」
何だか様子のおかしいミシェルが気にはなったものの、女生徒の目線に耐えられなかったルシエルは、目のあった数人にペコリと会釈をしてその場を去った。
その日の夜--
夕食の後、部屋に戻っていたルシエルの元に、ミシェルがやって来た。
「ルゥー?今いい?」
「うん。どうぞ」
部屋に入って来たミシェルは封筒を手に握りしめていた。
「どうしたの?」
「うん。実は、さっき手紙が届いて」
そう言って、手紙を広げる。
「アルフレッド様からなんだけど、明日一緒にランチしないかって」
「へぇ!それは、いいね!」
同じ高等部に入学したのに、なんの音沙汰もないアルフレッドとミシェルの仲を、ルシエルは少し心配していた。
このタイミングで手紙を寄越すとは、もしかして、今日闘技場でアルフレッドが手を振った相手はミシェルかもしれないと思い、少し嬉しくなった。
「で、ルシエルも一緒に、って書いてあるのよ。だから、明日よろしくね!」
「え?」
「そーゆー事だから。じゃ、おやすみー!」
「ちょっ!えっ?ミィ!」
なんで自分も?と、ルシエルは考えた。
もしかして、二人きりが気不味いからなのか。
と言うか、ルシエルはその理由しか思い浮かばなかった。
なぜ、婚約したにも関わらず二人の仲が発展しないのか。
アルフレッドとミシェルの間に何かあったのか…もしくは、あのパーティの女がミシェルでないとアルフレッドが気付いたか。
「どうなってんだか……」
今のところ、ミシェルからアルフレッドの名を聞くことは、ほとんど無い。
今日、一緒に闘技場へと行ったけど、ミシェルの態度は恋する乙女と言う訳ではなく、とりあえず気になったから行ってみた、と言うような部類であった。
ゲームの主人公に意地悪をするほど、アルフレッドを愛するようになる前兆は今のところ無い。
まぁ、それならそれで良いが、ゲームスタートまでまだ時間がある。
今はどうであれこれからどうなるか分からないため、ルシエルは気が抜けない。
「はぁ……頑張るか……」
とりあえず、明日。
この国の王子からの誘いを断れるわけもない。
ならば、明日はミシェルの引き立て役として、またキューピッドとして頑張ろうではないか、と気合いを入れるルシエルであった。
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