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学園生活の始まり …4
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「ミィ?」
ルシエルの言葉に、アルフレッドが反応した。
思わず自分の口から出た言葉に、ルシエルは焦った。
学園に通いだしてから、子供っぽい事を理由に、お互いに人前では愛称では呼ばない事にしていたのだ。
「あ、えっと」
「もうっ、ルシエルったら!…恥ずかしいですわ」
ミシェルがルシエルをちょっと睨んで頬を染めた。
「あ。もしかして、お互いのことは普段は愛称で呼び合ってるの?」
アルフレッドが楽しそうに笑う。
「え、えぇ」
「は、はい」
二人の返事が重なった事に、アルフレッドとレオンが楽しそうに笑った。
「じゃあ、僕もミシェルさんのことをミィって呼ぼうかな?ね?レオンもどう?」
「えっ?えっ?そんなっ!えっ?」
アルフレッドの言葉に慌てるミシェル。
「アルフレッド様。ミシェル様が困っておられますよ」
「あははっ。ごめん。冗談だよ。ちなみにルシエル君はなんて呼ばれてるのかな?ミシェルさんがミィなら、ルシエル君はルゥかな?」
突然、アルフレッドがルシエルに話題を振った。
その事にルシエルはドキリとした。
アルフレッドが笑顔で自分を見ている。
前世では二次元のイラストだったが、今はリアルのアルフレッドが見ている。自分を。
しかも、自分の名前を呼んで話しかけている。
ルシエルは、それが現実なのか妄想なのか一瞬混乱した。
あり得なかったことが、今、あり得ている。
「アルフレッド様。ルシエル様も困っておられるじゃないですか」
何も言わずに固まったルシエルを困っていると思ったのか、レオンが助け舟を出した。
その言葉に我に帰り、慌てて背筋を伸ばしたルシエル。
「あっ!はい!家ではルゥと。そう呼ばれています」
「へぇ、そうなんだ。ミィと、ルゥ。可愛いね」
そう言って笑うアルフレッドに、ふたたび見惚れそうになったが、ルシエルは慌てて自分の態度を律した。
惚けてばかりいたら、ミシェルにも迷惑をかけて、結果ミシェルの足を引っ張る事になる。
それだけは避けねば、と頭の中から邪な考えを押し出すよう気合いを入れた。
その後、食事が運ばれて来て、会話は学園の事になった。
先生の話や、講義の話題で盛り上がる。
「そう言えば、二人はクラブには入るの?」
アルフレッドがそんな事を聞いた。
クラブとは、放課後に活動する部活のようなものである。
友人を増やしたり、趣味趣向の幅を広げるためにあり、貴族でも半分の者がどこかのクラブに属している。
「えぇ。実は、少し興味のあるクラブがありますの」
「えっ?そうなの?」
ミシェルの言葉に驚いたのはルシエルである。
そんな話、ミシェルから聞いたことがなかったからだ。
成長の過程で、と言うか思春期に入ってから、クラブの件に限らず、ミシェルは昔と比べてルシエルになんでも話すというような事はなくなっていた。
ルシエルは気付いていなかったが。
そこは男女の差である。
「へぇ、どんなクラブ?」
アルフレッドの質問に対して、ミシェルが一瞬視線を彷徨わせたのをルシエルは見逃さなかった。
照れているのだとルシエルは思ったが、実はそうではない事をルシエルが理解する日は来ない。であろう。
「えっと……読書ですわ」
「読書か。いいね。そんなクラブがあったの知らなかったな。そうだ。レオンも本を読むのが好きだったろ?お前もどうだ」
アルフレッドの言葉に、ミシェルが狼狽えた。
「いえっ!あの…えっと、女性だけのクラブなのですわ。それに、レオン様が読まれるような崇高な本の読書会ではありませんの……その…」
言い淀むミシェルに、ルシエルは「あぁ…」と納得したような顔をした。
「ミシェルが好きと言えば、恋愛小説だよね?」
ルシエルがそう言うと、ミシェルが頬を膨らませてルシエルを睨んだ。
何も言わずとも、それが正解だと皆に伝わった。
「はははっ。ミシェルさんも可愛らしい所があるんだね。恋愛小説か。ってゆーか……クククッ」
突然アルフレッドが笑い出したので、ルシエルとミシェルは何事かと思った。
「レオンも、たまに可愛らしい本を読むよね?ファンタジーとか冒険物語とか……今も、なんか人気のシリーズにハマってるよね?」
「ちょっ、アルフレッド様っ!」
慌てたレオンに、ミシェルがキラキラの目を向けた。
「まぁ!もしかして『タリーシリーズ』では?私、あの物語好きですの」
ミシェルは恋愛物語も好きだが、ファンタジーも好んで読んでいた。
タリーシリーズは巷で人気の、主人公タリーの魔法と冒険の物語である。
一瞬恥ずかしそうにしたレオンだったが、ミシェルの言葉に食いついた。
「タリーシリーズ、ミシェル様も読まれるのですか?恥ずかしながら、そうなんです。あのシリーズが、好きで……新作の『タリーと海の王者』は読まれましたか?」
「えっ?新作?読んでませんわ!」
「よければお貸ししましょうか?私はもう読んでしまったので」
「ええ!ぜひ!」
楽しそうに話すレオンとミシェルを見て微笑んでいるアルフレッドの顔を、ルシエルは先程の気合いもどこへやら、ついつい見惚れてしまっていた。
だから、アルフレッドがルシエルのほうを向いた時、心臓が壊れるかと思うくらい、大きな音を立てた。
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