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学園生活の始まり …6
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「アルフレッド様はお優しいんですね」
アルフレッドとツーショットという、またしても夢のような状況に緊張しそうになったルシエルたったが、あえて自分から話題を振った。
ミシェルのために頑張ろうと思ったからだ。
「いや、それを言うなら、付き合ってくれたミシェルさんだよ。……ところで、ルシエル君はデザートは良かったのかな?」
「えっ?あっ、大丈夫です。お気遣いいただき、ありがとうございます」
自分の事を気にかけてくれた事に、ルシエルは思わず赤面した。
実はルシエルは甘い物は嫌いではない。
むしろ好きな方だが、ここでアルフレッドを一人にするわけにはいかず、そう答えた。
その気遣いを分かってか、アルフレッドは優しく微笑みを返した。
「ところで……ちょっとルシエル君に聞きたい事があるんだけれど」
アルフレッドが、デザートを選ぶミシェルとレオンを目で追いながらそう言った。
その声が先程までのトーンとは違っていたので、ルシエルは少し構えた。
「なんでしょうか?」
「うん。ここだけの話しにして欲しいんだけど……」
アルフレッドの目線は遠くのまま。少し何かを考える素振りをして続きを言った。
「ルシエル君は、仮面パーティって聞いて、何のことだか分かる?」
「……え?」
ルシエルの心臓が大きく跳ねて、先ほど頬を染めていた熱は一気に引いた。
アルフレッドの口から出る仮面パーティとは、十中八九あのパーティの事であろう。
分かるも何も、行った事がある訳だが、それを言えるはずはない。
何より仮面パーティに関しては、アルフレッドに後ろめたい事があるのだから。
何のことかと、とぼけようとルシエルは思った。
「……っっ」
けれど、こちらを見たアルフレッドと目が合った瞬間、ルシエルは嘘を口にする事が出来なくなった。
そこには、有無を言わせぬ、まさに王家の威厳を纏ったアルフレッドがいたからだ。
心まで見透かされてしまいそうなその視線に、ルシエルは言葉を失う。
その事が、アルフレッドにとっては答えとなったようだ。
「君は、知っているね?パーティの事」
ルシエルの視線が泳ぐ。
それには構わず、アルフレッドが続ける。
「ミシェルさんはそのパーティに行った事があるよね?」
アルフレッドの言葉に、ルシエルは目を合わせている事が辛くなり、視線を下げた。
行ったとは言えないが、行ってないと嘘はつけない。
ルシエルは、必死でこの場をどう切り抜けるか考えた。
アルフレッドは何が聞きたいのか。
ミシェルが遊び人なのかどうかを確認したいのか。
それならば、行ったのはただ一度きりだと言う事を訴えればいい。
あれは、ただ興味があって行ってみただけだと。
だが、確認したい内容が別の事だったら……
その答えが見つかる前に、アルフレッドが口を開いた。
「もしくは、ミシェルさんの名を使って、誰か別の人が出席していたのかな……?」
ルシエルは、息も忘れるほどに固まった。
アルフレッドは、すでに気付いている。
あの夜会った人物が、ミシェルではない事を。
それを自分に確認しようとしているのだ、とルシエルは思った。
ルシエルにはアルフレッドの本意は分からないが、あの夜の相手を求めてミシェルに求婚したのだと言うルシエルの憶測が、間違いではなかったことを示している。
「責めているんじゃないんだ。ただ、その…君は、その人が誰か知っているのか?」
「えっ?いえ…っ、あの…っ」
アルフレッドはあの夜の人物が誰なのかを知りたいのだと、ルシエルは悟った。
頭が真っ白になったルシエルは、とりあえず知らないとしらを切り通そう、と口を開く。
知りません、と。嘘でもそう言わなきゃ、と必死で顔を上げてアルフレッドの目を見た。
「っっ!!」
瞬間、ルシエルはその行動を後悔した。
ルシエルの目に映ったアルフレッドの顔が、とても真剣だったからだ。
理由は分からないが、アルフレッドはその誰かを本気で探している。
誰かを…ミシェルを責めるとかそう言うことではない。
あれが誰なのか知りたくて仕方がない。
それを訴えてくる目で、ルシエルを見ていた。
このまま見つめ合っていたら、あれがルシエルだとバレるんじゃないかと思う程の強い視線。
ただ、あの時のルシエルは声変わりもしていなかったし、仮面も着けていた。
ルシエルは声であれがアルフレッドだと気付く事が出来たが、アルフレッドにはそれが出来ない。
何より、目の前の人物が女装していただなんて、思いもしなかった。
だからバレる事はなかったのだが、ルシエルはそれでも大いに慌てた。
「……ーーも気になりましたの」
「あぁ、確かに美味しそうでしたね」
その時、ミシェルとレオンの話し声が近付いて来た。
アルフレッドは、目を瞑って大きくため息を吐く。
そして再びルシエルを見てこう言った。
「今の会話は、他言無用だよ?いいね?」
その物言いは、命令そのものだった。
「は、い」
その後アルフレッドは、なんでもないように和やかに会話を再開したが、ルシエルは平静を装うのに必死だった。
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