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クラブ活動 …1
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アルフレッドとランチをした翌日の昼休み、ミシェルはクラスの女生徒数人に囲まれていた。
アルフレッドとのランチは、彼のファンの間で瞬く間に広がっていたらしい。
学園にはアルフレッドのファン……という名の、アルフレッドの彼女の位置を狙う女達がたくさんいる。
「ミシェル様はアルフレッド殿下とどのようなご関係ですの?」
「昨日のランチをご一緒されたとか?」
「アルフレッド殿下と面識がお有りだったのですか?」
矢継ぎ早な質問に、ミシェルは気付かれないように小さくため息を吐いてニコリと笑う。
「そうですね。アルフレッド様には仲良くしていただいておりますわ。昨日はランチに誘って頂きましたの」
「まぁ!どのようにして仲良くなられたのですか?」
「仲良くとは?その……」
その様子を離れたところから見ていたルシエルは、女子の怖さにビクビクしていた。
助けに行きたいが、自分が行って何が出来よう。
あのような場に男が入って、いいことなど無いというのは、前世の記憶にも明らかだ。
その時、ミシェルの後ろから、丸眼鏡に赤毛の三つ編みの女生徒が近付いた。
「ミシェル様!今宜しいですか?」
「あら、ハンナ、ごきげんよう」
ミシェルに声をかけたのは、ハンナ・スターリン。
スターリン子爵の三女で、教室で一人読書をしていたミシェルをナンパした強者である。
因みに、ミシェルやルシエルのルーズベルト侯爵家は、貴族としての地位が高く、気軽に「友達になろう」などと声をかけてくる者はほとんどいない。
しかし色んな意味で近付きたいと思う者は多くある。
侯爵家と仲良くして、少しでも甘い汁を吸おうとする者達だ。
ハンナは純粋に読書の趣味でミシェルに近付き、すぐに気が合い友人となった。
そして、このハンナがミシェルを読書クラブに誘った張本人である。
「昨日お話しした件、今から宜しいですか?」
「!ええ。宜しくてよ。……では皆様、ごめんあそばせ」
そう行って、ハンナを連れて教室を出て行ったミシェルを見て、ルシエルはホッとひと息ついた。
が、それも束の間、それまでミシェルを囲んでいた女達が、ルシエルの方を向いた。
狙いを変えられ、ゾクリと背中に冷たいのもを感じたルシエルは、何かを思い出したフリをして教室を出た。
ルシエルにアルフレッドのような追っかけが出来るのも時間の問題だろうと言われていた。
貴族の地位と、その容姿、そして未だ婚約者がいない。
これで人物的に問題なければ、優良物件である。女達が放っておく訳がない。
学園は知識を得る以外に、社交を学ぶためでもあり、人脈作りのためでもあり、将来の伴侶を見つける場でもあったからである。
また、貴族はその多くが政略結婚のため、学園にいる間に青春を謳歌する者達もいた。
学園側も、節度さえ守っていれば容認していた。
男女の恋愛など禁止しても無駄だということを理解した上である。
教室を出たルシエルは、どこに行くでもなく廊下を歩いていた。
ふと、窓の外に目をやると、学園の中庭が見えた。
その視線の先に、この世界で初めて見る花を見つけ、気になって窓際に近付く。
(あれは……)
学園の中庭は結構広く、中央に噴水があり、その周りをいくつかの花壇が囲む。
ベンチやテーブルなどが所々に置いてあり、ランチをしたり読書をしたりしている生徒がいた。
中庭への扉を開け外に出る。
心地よい風を感じて、ルシエルは大きく深呼吸した。
雰囲気に慣れず、友達と言えるような人もまだいない教室では、常に息苦しさを感じていた。
因みに、今の季節は秋初である。
暦や四季は前世と同じ。24時間、365日である。
学園は9月に始まる、いわば欧米スタイルだ。
中庭のレンガの通路を歩いて、目的の花へ近付いた。
(やっぱり、コスモスだ)
それは、この世界で初めて見るコスモスだった。
前世ではよく見ていた花に、懐かしさを覚える。
思わず見惚れていたため、ルシエルは後ろから人が近付いて来たことに気付かなかった。
「珍しい花でしょう?」
突然後ろから声をかけられて、慌てて後ろを振り向く。
そこには、長めの銀髪を三つ編みにした、白衣の男性が立っていた。
ルシエルはその出で立ちに見覚えがあったため、一瞬チクリと頭の痛みを覚える。
「あぁ、驚かせてごめん。君は一年生だよね?私はランバート。ここの医務室で働いてるんだ」
その名前を聞いて、ルシエルは(やっぱりそうだ)と、頭痛の原因を知った。
彼はゲームの攻略対象の一人、ユーグ・ランバート。
学園の医師で、クールな見た目の美男子で知的キャラ。
普段は偉そうなのだが、好感度が上がり二人きりになると甘えてくれる。いわゆるツンデレだ。
ネットの評価ではお色気担当とコメントされていたが、前世のルシエルはそう言うのに疎く、ピンと来なかった。
「その花に、興味がある?」
「え、あ、はい。初めて見る花で……」
返事をしたルシエルに笑顔を返したランバート。
こんなに簡単に笑顔を見せるキャラだったかな?と思いつつも、目の下のほくろは泣きボクロだったか…なんて違う事をルシエルは考えた。
「その花はコスモスと言って、西の大陸から取り寄せたものなんだ。…そうだ、もし花に興味があるなら、放課後、裏の花壇に来ないか?」
ルシエルがその返事をしようとした時、午後の授業を告げる予鈴が鳴った。
「さぁ、行かなきゃ。じゃ、放課後、待ってるね」
「えっ?あ、ちょっ!」
行くとも行かないとも返事をする前に、ランバートは建物の中へ戻っていった。
「どうしよう……」
突然の誘いを面倒に思いつつも、入園したての分際で先生からの誘いを無視する事は出来ず、ルシエルは放課後学園の裏の花壇へと向かう事になったのである。
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