アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
クラブ活動 …3
-
入部届にサインをもらったランバートは「よし、これで今年も安泰だ」と呟いて「じゃあ後は頼んだよ」とジローに言い残して去って行った。
「あの……私が言うのも変ですが、ランバート先生が、無理矢理…その、入部させてしまって、申し訳ありません。ルーズベルト様」
ランバートが見えなくなると、ジローはそう言って頭を下げた。
「いえ、気にしないでください。花に興味があるのは本当ですし」
ルシエルがそう言うと、ジローが嬉しそうに笑う。
その笑顔に、ルシエルもつられて微笑んだ。
「あの……もし面倒でも、たまにしか顔を出さない幽霊部員もいるそうですから、その……」
ジローがどうやら、名前だけでも所属しておいて欲しいと言っている事に気付いたルシエルは「本当に、大丈夫だから」と返した。
クラブ活動なんてするつもりはなかったが、昨日の今日で園芸クラブに誘われた事に多少なりとも運命を感じてしまったルシエルは、もうすっかりその気になっていた。
何より、珍しい花を入手出来る活動が気になった。
そして、ルシエルは気付いた。
今こそ友達を作るチャンスだと。
確かに、ミシェルを見張ると言う重大な任務はある。
がしかし、ミシェルも読書クラブに入るのだ。
女子限定らしいそのクラブの活動中は、ルシエルに出来る事はない。
ならばその時間、自分もクラブ活動をするのも有りだと考えたのだ。
「ありがとうございます!」と笑うジローにルシエルは親しみを覚える。
「えーと、じゃあ、とりあえず園芸クラブについて説明させていただきますね?ルーズベルト様」
足元の花壇に目を向けたジローに、ルシエルが「あの!」と声をかけた。
「その、ルーズベルト…様って言うの、やめませんか?よかったら、ルシエルと…」
「よ、宜しいのですかっ?」
ジローのパアァとした笑顔に、ルシエルは嬉しくなった。
「うん。その、出来れば、友達になって、くれない?」
「う、嬉しいです!ルシエル様!私のような田舎者を友達と呼んでいただけるとはっ!ぜひ!是非お願いします!」
「うん、うん。様もいらないし、タメ口でいいから。あと、僕もジローって呼んでも良いかな?」
「もちろんですとも!どうぞ呼び捨てて下さいまし!ルシエル様!」
「いや、だからね……」
それからルシエルは園芸クラブの説明をジローから受けた。
活動は、ほぼ自由。
ルールは簡単。
育てる草花は、本人がキチンと責任を持って管理する事。
準備や片付けにも責任を持つ事。
活動場所は、中庭の花壇と校舎裏の花壇と温室。
たまに活動計画及び報告の会議があるとの事。
「あと、これも言っとかなきゃならないんですが…」
何度も直して、なんとかフランクに話してくれるようになったジローが眉を下げた。
「うちのクラブは、入部届はランバート先生しか持っていないんです。入部を決めるのはランバート先生のみ。で、おそらく今年は僕達二人が入部した事で、もう学生を受け付けないと思うんです。だから、勝手に誰かを誘ったり入部を承諾したりはできないので」
「え?どうして?」
「学園のクラブ活動は、学年毎に二人以上の生徒が属してないと経費が下りないらしいんです。ランバート先生は、少人数を希望していて、今年はもうそれを満たしたって訳です。何より、本当に園芸に興味のある人しか入れたくないらしくて……」
「ふーん?そうなの?」
部活動と言えば、人数が多いほうが楽しいだろうに、とルシエルは考えた。
「なんか、不埒な理由で入部希望する女子生徒が多いらしくて、そういうのが嫌だとおっしゃっていました……さてと、ここが温室です。入ってみます?」
「うん!」
話しながら着いた場所は、立派な温室だった。
話の続きが気になったルシエルだったが、それよりも今世で初めて見る温室にワクワクしていた。
ジローか引き戸を開けて中に入り、ルシエルが後に続く。
モワッとした空気に包まれて、ルシエルは前世を思い出した。
前世、実家は農業をしていた。
小さな温室が畑の中にあって、家族で食べる物なんかを祖父が育てていたのを懐かしく思い出す。
春先のイチゴは、何より楽しみだった。
そうだ、ここでイチゴを育てよう、なんてルシエルが考えた時だった。
緑のカーテンの奥に、人影が見えた。
「あ……殿下っ」
ジローのその言葉に、ルシエルの足は止まった。
人影が振り向く。
振り向いたその人は、アルフレッドだった。
「あぁ、君は確か一年の…」
「ジロー・エルフェでございます。お邪魔して申し訳ありません。新しく入部した方を案内しておりました。では、失礼いたしました……」
そう言って踵を返したジローを、アルフレッドは呼び止めた。
「ジロー君!帰る必要はないよ。気にせず案内を続けて」
アルフレッドの声に反応して、ルシエルは心臓がバクバクと音を立てるのを感じた。
会いたいような会いたくないような、そんな変な気分だった。
昨日の今日で言えば、会いたくない方が優っていたが。
「えっと……」
どうしようかとルシエルを振り返ったジロー。
ジローの目線を追ったアルフレッドが、ルシエルに気付いた。
「あれ?ルシエル君?」
名前を呼ばれてルシエルの心臓は更に跳ねるのであった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 166