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クラブ活動 …4
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「新しく入部?ルシエル君、園芸クラブに入ったの?」
アルフレッドが二人に近付いて来た。
「申し訳ありません!その、なんて言うか、ランバート先生に誘われて、そのっ」
昨日、クラブには興味がない素振りをしたにも関わらず、園芸クラブに入部したことへの恥ずかしさから、ルシエルはアルフレッドに頭を下げた。
「ん?どうして謝るの?それより、ルシエル君が入ってくれるとは嬉しいな。ようこそ、園芸クラブへ」
アルフレッドのその言い方に、ルシエルは照れながらも「?」を浮かべた。
それに気付いたアルフレッドが後を続ける。
「あぁ…僕は剣術クラブの他に、ここにもたまに顔を出すんだ。まぁ、本当にたまにだから、ランバート先生には幽霊部員だなんて言われてるけどね」
あはは、と笑うアルフレッドとは逆に、先ほどアルフレッドの事を「幽霊部員」などと言ってしまったジローは、しまった、という顔をしてルシエルの方を伺った。
けれど、ルシエルはそれどころではない。
まさかアルフレッドが園芸クラブに属していたと知らなかったルシエルは、今すぐ入部を撤回したい気持ちに駆られていた。
そんなルシエルの視線を別の物として受け取ったアルフレッドは、ポリポリと頭をかいた。
「まぁ、癒し?を求めて……と言うか、何と言うか」
そう言って恥ずかしそうに笑うアルフレッドを見て、ルシエルの『入部を撤回したい』は瞬殺された。
前世のゲームでも見たことのないこの可愛い笑顔が、同じクラブにいれば再び見れるかもしれないという下心だ。
「アルフレッド殿下の日頃のご心労のほど、お察し申し上げます」
ジローが深々と頭を下げる。
「いや、ははは。……そう言えば、中庭のコスモス、立派に咲いていたね。うちの庭にも植えたくなったよ」
「ご覧になられましたか?良かったです。ここに根付くか心配だったので」
この国の王太子であるアルフレッドと普通に話すジローに、ルシエルは感心していた。
ジローの人柄なのかアルフレッドがそうさせているのか分からなかったが。
ゲームでは、アルフレッドが誰かと仲良くなんてイメージはなかった。
王太子として孤独で、それを主人公マリーが癒すのだ。
だが、今のところそういう風には見えない。いや、見せないようにしているだけなのか。
ゲームと現実は違う。今後もちゃんと注意して状況を見なければ、とルシエルは思うのであった。
「そうだ!コスモスいくらかお持ちになられませんか?」
ジローがパッと笑顔になって言った。
「え?でも、貴重なものだろう?」
「いいえ!咲かせるのは簡単でしたし、ここまでのデータはしっかり取れました。来年もまた咲かせられます。……あ、ご迷惑でしたでしょうか?」
「そんな事はないよ。では、数本持って帰ろうかな?」
「ええ!ぜひ!殿下に愛でられれば、花も幸せでしょう!では、早速花束にして参りますね!……あ、一緒に来られますか?」
ジローが、出口に向けていた足を止めてルシエルを見た。
ルシエルが「行く」と言おうとした時……
「ルシエル君は、ここで僕の話し相手になっていてもらおうかな?」
「あぁ!そうですね!では、すぐに戻って参ります!!」
「えっ?あっ!」
ジローはルシエルを置いて素早く温室を出て行った。
彼がルシエルの心中など知る由はないのだから、王太子のアルフレッドを優先するのは当然だったが、ルシエルからしてみれば恨みたくて仕方がなかった。
まさか昨日に引き続き、アルフレッドと二人きりになるとは思いもしなかったからだ。
「ここに来るのは初めて?」
アルフレッドに声をかけられて、ルシエルは心臓が飛び出すほど驚く。
「〜っっ!はいっ。初めてです」
「そう。立派な温室だろう?ルシエル君は、何か育てたいものはある?」
アルフレッドの質問に、ルシエルは心持ちホッとした。
てっきり、二人きりになって聞かれるのは、昨日の続きだと思ったからだ。
だから、何も考えずにさっき思い浮かんだことを答えた。
「そうですね。イチゴなんかどうかな?と思っています」
「イチゴ?」
ルシエルの返事にキョトンとしたアルフレッドは、一拍置いた後、クスリと笑った。
「フフッ。イチゴか。良いね」
そのアルフレッドの顔を見た途端、ルシエルはしまったと思った。
女や子供ではあるまいし、イチゴはないだろうと思ったのだ。
「実がなったら食べさせてくれる?」
そう言って、馬鹿にするでもなく優しく微笑んだアルフレッドに、ルシエルは目が釘付けになった。
今まで見ていた笑顔は作り物だったのだと気付かされた、優しい笑顔。
ドキドキと、胸が高鳴る。
「は、い。頑張って…育てます…っ」
「うん。楽しみにしてる」
そう言って、温室の奥へと歩き出したアルフレッド。
ルシエルも慌ててそれに続く。
ふと足を止めたアルフレッドが足元に目をやった。
そこには紫の花が咲いている。
ラベンダーだろうか?とルシエルは考えた。
「昨日の、話なんだけどね」
唐突に、その言葉は発せられた。
「ミシェルさんの代わりにパーティに行った人……」
(やっぱり!来た!!)
ルシエルはゴクリと喉を鳴らした。
そしてグッと両手を握りしめて、こんな時のために昨夜用意していたセリフを思い出す。
まさか、こんなにすぐに使う事になるとは思いもしなかったが。
「あの、確かにミシェル……姉は仮面パーティの招待状を持っていた事があります。ですが当日、別の用事が出来てそちらを優先したのです。その時、パーティの方をどうしたかは、私には分からないのです。申し訳ありません」
「ーーそうか」
アルフレッドが返事を返すまで、ルシエルは生きた心地がしなかった。
嘘だとバレてないかと様子を伺うが、アルフレッドにそんな素振りは見られなかった。
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