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アルフレッドとレオン …1
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日にちは遡って、アルフレッドがルシエル達と学園でランチをした日の夕方のこと--
アルフレッドとレオンは、王宮の離れの小屋にいた。
ここは昔、庭師が草花の研究のために寝泊まりしていたところで、今は誰も使っていなかったところを、アルフレッドが改装して使っている。
小屋の側には庭園があり季節の花が咲いている。
小屋のドアを開けてすぐに、小さな丸テーブルと椅子、簡易キッチンがある。
奥の部屋にはベッドがあり、シャワーとトイレも付いていて、アルフレッドは王宮を抜け出してたまにここで寝泊りをしていた。
周りの花の世話をしたり眺めたりして過ごす事で、日々のストレスを発散しているのだ。
アルフレッドは幼い頃から王太子として教育されていた。
休む間も無く多くの事を詰め込まれ、期待され、大人達の色んな思惑を含んだ目線に耐えて来た。
本人は気付かなかったが、ストレスで笑えない時期もあった程だ。
そんなある日、乳母が持ってきた花を眺めていたら気持ちが癒された事に気付いた。
それから、花に興味を持つようになった。
その頃この小屋の存在を知り、こうしてたまに王宮を抜け出しては花を眺めている。
今では自分で花の手入れをする程になった。
「で、結局のところ、ミシェル様を選んだのはどういう理由ですか?」
レオンが茶器にハーブティーを注ぎ終わったところで、そう切り出した。
ちなみにこのハーブはアルフレッドが育てたものである。
「……まぁ、何て言うか。……多分、お前の思っている通りだよ」
頭をポリポリとかきながら、アルフレッドが答えた。
「!!それは、良い事にございますね!……では、どうして、私にすぐに教えて下さらなかったのですか?」
レオンの質問に対して、アルフレッドが大きくため息を吐いた。
「彼女と会ったのが、一年くらい前。お前がちょうど風邪で寝込んでいる時だった」
レオンが「あぁ」と小さく頷いた。あの時か、と。
レオンは流行りの風邪で一週間寝込み、念のため、と更に一週間も外出を禁止されていたのだ。
「お前が回復したら、伝えようと思っていた」
アルフレッドが再びため息を吐く。
「けど……すぐに分かったんだ。間違いだったことが」
「間違い?」
「そう。違ったんだ。彼女じゃ、なかった。焦って婚約したのが失敗だった。あぁ、これはレオンに怒られるな、と。……それで、言い出し難くて。言うきっかけを探してたら、今になったって訳だ」
アルフレッドが再びため息をついて項垂れるのを見て、レオンはアルフレッドに"悩み"を打ち明けられた日の事を思い出した。
レオンとアルフレッドが出会ったのは、王立学園の中等部である。
当時、二人は成績トップを争う良いライバルだった。
しかし、3年生になったある日を境に、アルフレッドの様子がおかしくなってしまう。
成績も下がり、思い詰めた様子が見て取れた。
レオンはそんなアルフレッドが心配になり、何度も様子を伺いに行く。
ライバルではあったが、それ以上の仲間意識を感じていたからだ。
最初、アルフレッドは何も喋らなかった。
レオンはそんなアルフレッドの態度に、逆に意地になって付き纏った。
これまで争って来た相手。また、これからも争いたいと思っていた相手が、自分の隣から消えるのが嫌だった。
そうして一月ほど経った頃、アルフレッドがようやく絆される。
ポツポツと語り出した内容に、レオンは驚いた。
アルフレッドが14歳の社交デビューを迎え、しばらくしてからのこと。
彼に性教育が行われた。
王家を背負う者として子孫を残さねばならないため、良い意味でも悪い意味でも、王族の男児はそうした知識を詰め込まれる。
その後、実技が行われるのだが、アルフレッドは……出来なかった。
プロ相手に反応しなかったのだ。
その日は緊張していたため出来なかったのだろうと推測されたが、後日仕切り直された場でも、勃たなかった。
誘ってくる目、甘い香り、手に余る乳房……一般的に好まれるそれらに、アルフレッドは何故か気持ち悪くなってしまったのだ。
極め付けが、自分を見ても反応しないアルフレッドに対して、その相手がため息をついた事だ。
そのため息に、アルフレッドのプライドは引き裂かれた。
男として、また、子供として馬鹿にされているようなそのため息が、アルフレッドの心を大きく傷付けた。
そこまで話を聞いた時、レオンは慰めの言葉が全く思い浮かばなくて焦った。
子孫を残さねばならないと言う王太子の背負う荷物の大きさが想像出来なかったからだ。
一貴族の子供が何を言っても、ただの綺麗事にしかならない。
それに、そういう行為に対して、レオンにはボンヤリとした知識しかなかった。
次は上手くいくなどと、責任の持てない事は言えない。
しかし、今まで散々付き纏った挙句、悩みを聞いても何も出来ない自分が許せなかった。
レオンは必死に考える。
何か一言でも良い。
アルフレッドの気持ちを軽くしてあげられないかと。
「その……実技のその女が、殿下には合わなかっただけではないですか?」
「二度目の時……別の女が二人来たけど、ダメだった」
更に傷をえぐってしまった自分を呪いたくなったレオン。
「一応、ご確認なのですが……ご自分でされた事は……」
「それは、大丈夫、だ」
その返事を聞いて、レオンはひとまず最悪な状況ではないと知り安堵した。
男として機能を成さない病気がある事を知識として知っていたからだ。
未経験のレオンはアルフレッドの気持ちを推測する事しか出来なかったが、自分に置き換えても、女性の前で勃たないと言う事が男のプライドに関わる事はなんとなく理解できた。
さらにアルフレッドは王太子だ。
レオンが想像する以上の辛さがあるのだろうと、思い巡らせた。
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