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アルフレッドとレオン …3
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「あの、仮面パーティの夜。あの日は、いつもの様な変装もせず。ただ、癖の様な物で……フラリと様子を見に行ったんだ。……で、会場を眺めながら、そろそろ見合いでもしようかな、なんて考えたりしてた。だって、ヤルことはヤレる様になったんだし。それなりの相手とそれなりの結婚でもすれば良いかなって」
そこでアルフレッドがひと息つく。
レオンは身じろぎもせず話の続きを待った。
「しばらくすると、ある女が目に入った。あのパーティに似つかわしくなく、全く踊るそぶりもなく、誰かと会話をするでもなく、必死に壁の花になろうとしていた。……フッ。何しに来たんだ?と思ったよ。もしかしたら、初めてで緊張してるのかな?なんてね。若そうだったし。で、気になって目で追っていたら、その子がバイエル子爵んとこの次男に目を付けられたんだ。……片っ端から気の弱そうな女に声をかけてたから、すぐにあいつだと分かったよ」
「あぁ、あの遊び人の……」
「そうだ。で、気をつけて見ていたら、あいつ、その子を無理矢理バルコニーに連れ出したワケ。それを見たとき、何か放っておけなくて、二人を追いかけたんだ」
それから、何かを思い出したようにアルフレッドが微笑んだ。
「案の定、あの男、無理矢理手を出そうとしていた。だから、助けに入ったんだ。その時……その子に触れたんだけど……あの瞬間、俺の体に、なんて言うか、雷が落ちた気がした」
「雷?」
レオンが首を傾げる。
「その子は体調が悪かったらしく、よろけた所を抱きとめたんだけど……こう……」
アルフレッドが右手で空をかいて、笑った。
「ッ…ク。反応したんだ。男の俺が。思わず口付けてしまうほどに。いや、意図的だった。口付けて、確信した」
話の展開について行けず、レオンはポカンと口を開ける。
そして、アルフレッドの言った意味を理解して、頬を染めた。
「む、無理矢理っ、されたのですかっ?」
「仕方ないだろう?……初めてだったんだ。抱き寄せた時に感じたあの感覚。女に触れる喜びを初めて感じた。あんな事あるものなんだな。この子となら、と思ったよ。……でも、逃げられた」
「そりゃそうでしょう。無理矢理キスされりゃ……って、それがミシェル様だったんですか?」
レオンが乗り出す。
「まぁ、とりあえず、逃げたその子の後を追わせて、ルーズベルト侯爵の館に帰ったのを掴んだ。あそこには、ちょうど社交デビューした娘がいる。だから、その子だと。ミシェルさんだと思ったよ。舞い上がって、すぐに婚約を申し込んだ。誰かに取られる前にと焦って。で……婚約が成った後、挨拶に行って、気付いたんだ。あの夜の女はミシェルさんではないと」
「……は?どうして違うと?もしや、挨拶行ったその日に手を出されたのですかっ?」
レオンには珍しく動揺している。
「違うよ。ミシェルさんにはエスコート以外に触れた事はないよ。でも、それだけで十分だった。……ミシェルさんには、反応しなかった」
「では……では、アルフレッド様がパーティの夜に会った女はどこに?」
「それが分かれば、こんなに悩んでないよ。なんであの時あの手を離したのか……今や後悔しかない」
アルフレッドが手を握りしめて、肩を落とす。
「婚約した相手の家で、別の女を探す事など出来ない。あのパーティに出ていたのは、あそこの侍女か、もしくはミシェルさんの友人か……。何にせよ、どうにも動けない」
レオンがその内容の複雑さに、眉間に皺を寄せた。
「……ミシェル様は巻き込まれただけ……」
「言うな。分かってる。ちゃんと確認もせず巻き込んだ俺が全部悪い。しかし、あちらも婚約は乗り気で受けてくれたのだ。それに、ミシェルさんはあのパーティの子とは違えど、惹かれるものはある。婚約はお互い納得の上だ」
レオンが唇を噛んだ。
「せっかく唯一の相手を見つけられたのでしょう?諦めるのですか?」
「仕方ないだろう。婚約など、そう簡単に破棄できるものではない。それに、あの夜の事は、俺が求め過ぎたせいで見た夢かもしれない。運命の女なんて、存在しないのかもしれない」
レオンがグッと言葉を詰まらせる。
「でも…しかし……。そうだ!ルシエル様を味方に付けられては?理由を話せば、協力してくれるかもしれません」
「実は今日、昼の時に探ってみた」
「えっ?で、どうだったのですか?」
「何も聞けなかった。……と言うか、途中でお前とミシェルさんが戻って来て邪魔されたからね」
そうして、ジトッとレオンを睨む。
「えっ?そ、それは、申し訳ありません!!」
レオンは自分の犯した失態に気付いて、深く頭を下げた。
そんなレオンに対して、アルフレッドはフッと笑った。
「いいよ。どうせ、ルシエル君は何も喋ってくれなさそうだったし」
「え?そうなんですか?」
「俺がパーティの事でミシェルさんを責めるとでも思っているんだろう。あの二人はお互いを裏切らない。ルシエル君がミシェルさんを裏切って俺の味方になる事はないだろうな」
「ですが……」
「それに今後の事もある。何より、あまり必死になれば俺自身の事を疑われるだろう。それは嫌だしな」
「ですが、アルフレッド様!せっかく……っ」
更に言い寄ろうとしたレオンをアルフレッドが片手を上げて止めた。
「分かってる。俺だって簡単に諦められないよ」
そうして、何かを思い出すように優しく笑ったアルフレッドを見て、レオンはなぜか泣きたくなったのだった。
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