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学園での噂 …2
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それから数日後、ルシエルがそろそろ寝ようとしていた時、部屋にミシェルが来てこんな事を言いだした。
「今度、剣術クラブへ見学に行こうと思うの」
「あぁ。最近よく行ってるみたいだね。でも、改まってどうしたの?」
ミシェルがわざわざ自分の行動を伝えに来たことに、ルシエルは首を傾げた。
「ええ。模擬戦があるらしくて。その見学に行きたいの」
キラキラの目でルシエルを見つめるミシェル。
その行動にもしやと思い、ルシエルは聞き返した。
「もしかして……僕も一緒に?」
「ええ。いいでしょう?」
ルシエルは「ええー」と不満を述べるのをすんでのところで堪えた。
彼も、アルフレッドとのランチに行きたくないと言うワガママを聞いてもらったばかりだったからだ。
ミシェルが剣術クラブの見学に行くことで、アルフレッドとの仲を深めようとするのは良い。
しかし、例の噂の事があってから、ルシエルはミシェルをこの先どう応援していいか分からなかった。
それに、今まで避けていた分、アルフレッドと会う事が気不味かった。
「友達は?ほら、ハンナさんだっけ?」
「頼んだわよ。でも、その日は無理なんだって。ね?他に頼める人はいないし、一人で行くなんて寂しいわ。付き合ってくれない?」
「……その日は、園芸クラブの用事が」
「あら?まだ、何日にあるなんて言ってないわ。で?園芸クラブの用事があるのはいつなの?」
「うっ……」
「もしかして、私に付き合いたくないってこと?」
「……いや、そうじゃないけど……ごめん」
素直に謝ると、ミシェルがやれやれと肩を竦めた。
「どうしたの?……もしかして、アルフレッド様に会いたくないのかしら?」
「えっ?そんなことないよっ」
慌てて否定したが、ミシェルは何か分かった様な顔をしてジトッとルシエルを見た。
「ふーん。でも、この前のアルフレッド様に誘われたランチ、あれ仮病使ったでしょ?……アルフレッド様と何かあったの?」
「な、何もないって」
「もしかして、噂の事、聞いた?それで避けてるの?」
"噂"と言う言葉に、ルシエルはギクリとした。
アルフレッドを避けたい理由の半分はそれであるからだ。
「なんの、こと?」
とりあえず、ルシエルはシラを切ってみた。
そんなルシエルを伺うように見たミシェル。
「まぁ、いいわ。と言うわけで、来週よろしくね!」
「えっ?ちょっ!」
言いたい事を言って、ミシェルは「おやすみなさーい」と、部屋を出て行った。
どうやら、一緒に行くことが決定したらしい。
ドアが閉まるのを見て、大きく溜め息を吐く事しかできないルシエルであった。
そして、剣術クラブ、模擬戦の日。
ミシェルに連れられて、ルシエルは闘技場に来た。
前回来た時よりも観客は多く、女だけでなく男の姿も多く見られた。
模擬戦は、前日までに選ばれた16人が、トーナメント形式で一対一で対戦していく。
観客はそれぞれ誰かを応援しているようで、あちこちから名前を呼ぶ声が聞こえる。
たまに上がる黄色い声援の対象を見て、どこの世界もイケメンはモテるんだな、なんて事をルシエルは考えた。
「あっ、レオン様」
ミシェルが小さく呟いたのと同時に、黄色い声援が多く飛んだ。
アリーナを見ると、そろそろ試合が始まるようだ。
「あ、初戦はレオン様か……なんか、すごい人気だね」
「そうね」
そう一言返事して、ミシェルは闘技場の中心へ真剣な目を向けたのでルシエルもそれに倣った。
その試合、レオンは苦戦しながらも勝利した。
審判が勝者を告げると、再び黄色い声がそこかしこから上がる。
「ふぅ」と、隣から息を吐くのが聞こえて、ルシエルはミシェルを見た。
膝の上に置いた手が力強く握られているのを見て、何か引っかかるものを感じた。
「ねぇ、ミィ?」
「……なに?」
「怖いなら、見学に来なきゃいいのに」
ルシエルは、ミシェルは剣術の試合が怖いのだと思った。
クラブ活動とは言え、実践を想定した剣術なので、怪我をしない事はないからだ。
思った事をそのまま伝えると、それまでアリーナに目を向けていたミシェルがルシエルの方を向いた。
目をパチパチさせた後、歯切れが悪そうに「え、えぇ」と返事をして
「それも、そうね」
と、困ったように笑った。
その笑顔の意味が分からなかったルシエルは、ミシェルの表情を読み取ろうと目を凝らしたけれど、その時、この日一番の声援が聞こえて、二人は再びアリーナに目を向けた。
「次はアルフレッド様だわ」
ミシェルの言葉に、ドキリと心臓が跳ねたルシエル。
そんな自分に気付いて、ルシエルはかぶりを振った。
名前を聞いただけで反応してしまった自分を情けなく感じたのだ。
しかし、その対象を目に写してしまえば、もうどうしようもない。
久しぶりに見るアルフレッドの姿はキラキラと輝いて見えて、動悸が止まらなくなってしまう。
ルシエルが一人オロオロしているうちに、試合が始まる。
先ほどのミシェルの様に、気付かないうちに膝の上の手をギュッと握りしめていた。
(アルフレッド様っ)
ーー怪我をしませんように、勝てますように。
そう祈りながら試合を見つめる。
そうして、アルフレッドの勝利が決まった瞬間、ルシエルはそれまで息をする事を忘れていたかのように、大きく息を吐いた。
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