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学園での噂 …6
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「大方、アルフレッド様の噂を耳にして、それを気にしているのでしょうけど?」
ミシェルのその言葉に、ルシエルはピクリと反応した。
「私は気にしていないわ。だから、ルゥも気にすることはないのよ?」
「え?」
ミシェルから意外な言葉が出てきて、ルシエルは驚いた。
「だって、その……噂って……」
モゴモゴと言い淀んだルシエルに、ミシェルが「フン」と鼻を鳴らした。
「アルフレッド様の過去の女達の話でしょう?知ってるわよ?その噂を私に聞かせることで、アルフレッド様から私を遠ざけようとする方々が、それはそれは丁寧に教えてくださいましたもの」
「いや、その……あまり良い話じゃない、よね?気にならないわけ、ないよね?」
ミシェルはプライドが高い。
だから、ただ強がっているだけではないかと、ルシエルはミシェルの様子を慎重に伺った。
「まぁ、全く気にならないと言えば嘘になるわ。でも、気にしても仕方のない事でしょう?私がアルフレッド様の過去の女にどうこう言う資格はないわ」
「いや、でも、その……女にだらしが無いと言うか、えーと。その、ミシェルは大丈夫なのかな?って……」
「どの噂も過去の話でしょ?過、去、の。私と言う婚約者ができる前の話だわ。今のアルフレッド様にそう言う素振りは見えて?私は、弄ばれているように見えて?」
ミシェルが両手を広げてみせた。
そのミシェルの言葉に、ルシエルは何も言えない。
確かに、クラスメイトから聞いた話は昔のもので今の話ではない。
「ね?そう言う事よ?私達の知っているアルフレッド様だけを信じれば良いじゃないの」
「僕たちの知っている……」
「そうよ」
ルシエルは考えた。
確かに、ルシエルの知っている現在のアルフレッドは、ミシェルを丁寧に扱ってくれているし、浮気している素振りもない。
誠実そのものに見える。
ただルシエルは、ゲームのアルフレッドという存在を知っていた。
だからこそ、アルフレッドが心変わりするかも知れないという未来を想像せずにはいられなかった。
「でも、そのうち、その……アルフレッド様の……悪いクセが出て、他の女に行っちゃったりしたら、どうする?」
ルシエルのその質問に、ミシェルは眉を寄せた。
「アルフレッド様が浮気したら、と言うこと?」
「うん。まぁ、浮気。と言うか、なんと言うか……」
ゲームのアルフレッドは、ミシェルと婚約破棄をする。
浮気と言うより、本気の愛を見つけて。
ルシエルはそれを想像して、唇を噛んだ。
「まぁ、浮気は……程度によるわね」
「程度?」
「そう。私達はなんだかんだと政略結婚に近いじゃない?だから、多少のことには眼をつぶらないといけないとは思っているわ」
「ミィ…」
ミシェルの答えに、ルシエルは驚いた。
ミシェルの言い方だと、もしゲームの主人公マリーが出てきたとしても、見て見ぬ振りをするかもしれない。イジメなどしないかもしれない。
ルシエルは、ミシェルに何か変化が起こっているのかも知れないと思った。
「でも……もし浮気じゃなくて、本気だったなら」
ルシエルの頭の中を見たかのようなミシェルの言葉に、ルシエルはドキリとした。
もし"本気"なら?
意地でも阻止する?別れさせようとする?
--ゲームのように。
そんな考えが浮かんで、ルシエルの背を冷や汗が伝った。
「もし、本気、だったら……どうするの?」
「そうね。……その時は、私は身を引くわ」
「……え?」
想像もしなかったミシェルの答えに、ルシエルは驚きを隠せなかった。
「何を驚くの?もし、本気になれるお相手が見つかったのなら、その方と一緒になる方が良いに決まってるじゃない」
「えっ?でも、でも!」
「私達、政略結婚なのよ?……好きな相手が出来て、その方を選ぶと言うなら、私は用無しでしょ?」
「そんな、っ!だけど……」
ミシェルの言うことが本当なら、ゲームとは違う未来になるだろう。
主人公マリーを虐める事なく、婚約解消。
それはルシエルの喜ぶべき未来。
けれど"政略結婚"と言い切る辺り、ミシェルはこの結婚に対してすでに良い感情を持っていないように聞こえる。
二人の間に、愛は無いと。
それはそれで寂しいと、ルシエルは思ってしまった。
「ミィは、それで、いいの?アルフレッド様の事、物語の王子様みたいだ、って。好きになるって……」
ルシエルのその質問に、ミシェルは深い溜息をついた。
「……ルゥ?」
「な、に?」
「私ね、アルフレッド様の事は……」
急に声のトーンが落ちたミシェルに、ルシエルはドキリとした。
「ミィ?」
「い、いえ!なんでもないわ!とりあえず、噂のことは気にしないこと!明日からは今まで通りにしてよねっ!話は以上よ!」
「えっ?あっ、うん。いや、あのっ!ミィ!」
気になる事を言いかけて部屋を飛び出したミシェルをルシエルは追いかけたが、ミシェルは自分の部屋に閉じこもってしまって、その日は会う事は叶わなかった。
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