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ルシエルの策、その2 …1
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次の日、ルシエルは一日中ミシェルの事を考えていた。
「はぁぁ……」
学園から帰ると、裏庭のバラをなんとなく弄りながら、ずっとため息を吐いている。
昨夜、ミシェルが言いかけた事。
『アルフレッド様の事は』の続きは「好きじゃない」もしくは「好きになれない」
そう言った趣旨の事だろうとルシエルは考えていた。
双子だからなのか、ルシエルとミシェルはお互い考えていることが通じてしまう事がある。
ミシェルはアルフレッドに対して、恋愛感情はない。
それは、これから育つ可能性も少ない。
ルシエルはそう感じたのだ。
そして、アルフレッドもまたミシェルの事を特別には見ていない事を、ルシエルは分かっていた。
アルフレッドが恋をすればどうなるか。
ゲームの知識ではあるが、ルシエルはそれを知っていたからである。
なぜ、そんな二人が婚約する事になったのか。
(全部、僕のせいだ……)
あのパーティの夜、自分が変な男に引っかかったりせず、またアルフレッドの事をちゃんと拒否さえしていれば、こんな状況にはならなかったかも知れない。
ルシエルは大きな罪悪感を背負わざるを得なかった。
やっとの事で開花させた、四季咲きのミニチュアローズを撫でながら、ルシエルは再びため息を吐く。
「婚約がなかった事になれば、お互い幸せになれるんじゃないかな……」
そう呟いてから気付いた。
二人の婚約を解消させるのだ、と。
二人のことを知る自分なら出来るかも知れない。
お互い自由になれば、アルフレッドがマリーと出会っても何ら問題は無い。
ミシェルがマリーをいじめる理由はなくなるし、それ以前にミシェルが別の恋を見つけて幸せになる道も見つかるかもしれない。
ミシェルが幸せになる事こそ、ルシエルの望みだ。
「主人公、マリー……」
何気なくそう呟いてから、ルシエルは一人落ち込んだ。
大好きだった、ゲームのアルフレッド。
それを、今知るリアルのアルフレッドと重ねる。
あの手でマリーに触れて、あの声でマリーに愛を囁いて、あの腕でマリーを抱きしめて、あの唇で、マリーの……
「あ、れ?」
そこまで考えてから、ルシエルは自分の目に涙がたまっていることに気付いた。
その理由は、簡単に分かった。
『大好きだった』は、過去ではない。
(今も、好きだ……)
涙が溢れないように、天を仰ぐ。
大好きなミシェルの婚約者という状況なら我慢できた。
けれど、どこぞの誰とも分からないマリーとアルフレッドが結ばれる事を考えるのは、とても辛かった。
鈍いルシエルでも、それが嫉妬だとハッキリ分かるくらいに。
「辛いなぁ……」
前世に引き続き、今世でも報われない恋をするとは。
しかし、ミシェルを救うことが出来るかもしれない事は、ルシエルにとっては喜ぶべきこと。
「がんばろ」
自分にそう言い聞かせて、ルシエルは涙を拭った。
その時、後ろから誰かが近付いてくる気配がした。
振り向くと、庭師が箒を持って掃除をやっているようだ。
「こんにちは」
ルシエルはいつも世話になっている庭師に、挨拶をする。
「ルシエル様、こんにちは」
「どうしたの?そんなに散らかってないように思うけど」
ルシエルの言う通り、二人のいる裏庭は、大して散らかってはいない。
落ち葉が少し落ちているくらいだ。
裏庭なので、普段はこの程度は許容範囲なのだ。
「ミシェル様からの言いつけで」
「ミィの?」
「はい。どうやら明日、お客さまがいらっしゃるそうで」
「お客さま?」
ミシェルが誰かを呼んだのだろうか?とルシエルは考えた。
それにしても、裏庭を見せるなんて、何を考えているのだろうか?
この時期は花も少ないし、見ても楽しいものではない。
そう思っていると、庭師が驚くべき名前を出した。
「アルフレッド様がいらっしゃるそうですよ」
「……えっ⁈」
一瞬「どのアルフレッドだ⁈」なんてことを考えたルシエルだったが、ミシェルと自分の知るアルフレッドなんて一人しかいないと気付く。
「あれ?ご存知なかったですか?ルシエル様のバラをご覧になるのだと……」
「えええっ!!」
バラ⁈バラってなんのこと⁈と慌てたルシエルは、ミシェルの元へと駆けつけた。
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