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アルフレッドの葛藤
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突然、土下座をしてあのパーティに出ていたのは自分だと言い始めたルシエルに、アルフレッドは内心大いに慌てていた。
確かに、あの時の女が誰かを知りたかった。
ルシエルかも知れないという思いはあったが、確証はなかった。
今まで隠していたのに、突然こうして白状して、悪いのは自分だと言う。
そのきっかけは何だと探ろうとしても、テンパっている故か何も考える事は出来なかった。
ただ、土下座したルシエルを立たせなければと思い、アルフレッドは「立て」と促す。
ようやく立たせてから、下げていた頭を上げさせると……アルフレッドは目を見張った。
涙を我慢しているのだろう。
潤んだ瞳で上目遣いで自分を見るルシエルのその姿に、理性が吹っ飛んでしまいそうになった。
「……っ」
思わず抱きしめそうになって差し出した手を、なんとか途中で止めた。
そして、その手を誤魔化すかのように、ルシエルの肩に置いた。
「謝る必要は、ないから」
そう言った途端、ルシエルの目に涙が溢れる。
ルシエルの肩に触れた事で、彼が震えていると気付いたアルフレッドは、もう自分を抑えられなかった。
「っっ」
アルフレッドはルシエルを抱きしめた。
何故泣いているのだ?
自分はそんなに怖いのだろうか?
何故だか分からないが、ルシエルが自分から離れていってしまう気がして、アルフレッドは回した腕に力を込めた。
「教えてくれて、感謝する。……そうか、あの時の女は、君だったのだな」
「も、申し訳っ」
「だから、謝る必要はない。それに、君を罰するつもりもない」
アルフレッドの言葉に、ルシエルがピクリと反応した。
「どうして、ですかっ?…だって、僕……っ、私はアルフレッド様を欺いてっ」
直立不動でアルフレッドに抱かれているルシエル。
そんなルシエルは、あの日の事に大きな罪悪感を背負っているのだとアルフレッドは思った。
自分のせいでアルフレッドとミシェルに迷惑をかけたと思っている。
それを、何故今になってかは分からないが、懺悔しているのだ。
ルシエルにパーティの事を問いただした日から悩んでいたに違いない。
そして、この二人きりになる機会を得て告白する事にしたのではないか。
何となくルシエルから避けられているとは感じていたが、それは自分のせいだったのだ、とアルフレッドは思った。
「大丈夫。君は何も悪くない。むしろ……僕が君を悩ませるような状況にしてしまったようだ」
「い、いえ!そんなっ!アルフレッド様は何もっ!」
身じろいだルシエルを、アルフレッドは離さない。
「いや……僕がミシェルさんと婚約した事で君は罪悪感を抱いたのだろう?それが、あのパーティがきっかけではないかと気付いて。パーティで、あんな事があったから。……あれは、自分のせいだと」
ルシエルは黙ってアルフレッドの話を聞く。
「しかし、謝るなら、僕の方だ」
「……え?」
「僕が、あんな事をしたから、君をこんな風に悩ませているのだろう?全部、僕のせいだよ。……すまなかった」
「いえっ、謝るのは、私なんです!」
顔をアルフレッドの方に向けて、ルシエルがそう言った。
こんな時なのに、首筋にかかる息に反応してしまう。
「……いや、僕だよ。僕が……君を見つけたせいだ」
「……え?」
あの日のことを思い浮かべながら、アルフレッドはルシエルの背を撫でるフリをしながら、その手を腰に下ろした。
男にしては細めのウエストが、腕の中にスッポリと収まる。
その心地良さを感じ、改めてあの夜の女はルシエルだったのだと納得した。
そして次に思い出したのは、唇の柔らかさ。
あの、唇に触れた時の歓喜を、もう一度味わいたい衝動に駆られる。
--欲しい
ここ数ヶ月、、、いや、何年も探していたもの。
相手が男だなんて、もうどうでもよかった。
その相手が腕の中にいるというだけで、身体が熱くなった。
しかし、ただでさえ怖がらせているらしいこの状況で、これ以上の行為に及ぶわけにはいかなかった。
そんな事をして嫌われて離れていくのが怖かった。
アルフレッドは何とか理性を繋ごうとする。
自分を乗っ取ろうとする欲望と葛藤するうち、アルフレッドはその首に顔を埋めていた。
口付けをする勇気はない。
けれど、どうしてもその肌を唇で味わいたい。
その欲に勝てなくなるほど、アルフレッドはルシエルに欲情してしまっていた。
「っ!!」
首筋に唇が触れた瞬間、ルシエルがピクリと反応した。
それがアルフレッドの理性を呼び戻す。
自分は何をしているんだ!と。
何かごまかさなければ、と焦ったアルフレッドは、そこで大きく息を吸い込んだ。
「君は……太陽の匂いがするね」
苦しい言い訳。
キスしたのではない。
匂いが気になったのだと。
しかし、その言葉にルシエルは固まった。
言い訳には苦しかったか……と、バツの悪さを感じながら、アルフレッドは身体を離した。
そうして、ルシエルを見る。
真面目な話をしていたのに、こんな事をしてしまう自分を軽蔑しているだろうと思ってその顔を見たが、ルシエルの表情はアルフレッドが思ったものと違っていた。
驚きで目を見開いていたルシエルだったが、アルフレッドと目が合うと、徐々にその頬を染めたのだ。
そして、困ったように眉を下げた。
それはアルフレッドが触れた事に戸惑ってはいるものの、嫌悪しているような表情ではなかった。
その染まった頬を見たアルフレッドは、再びルシエルを抱きしめたくなった。
が、それこそ理性を総動員して踏ん張った。
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