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旅の恥はかき捨て …4
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「どこまでなら、許される?」
「……え?」
アルフレッドがルシエルの側に移動して来た。
手を伸ばせば、触れられる距離まで。
「君は、僕に触れられるのは嫌じゃないと、先日言った。……それは、どこまでなら許されるという事だろうか?」
ルシエルはその言葉の意味を考えて、混乱した。
確かに言った。
最後に会った、キスをされた日に。
触れられるのは嫌じゃない。むしろ嬉しい。
どこまで、なんて考えるまでもない。
しかし、アルフレッドはどんな意図でこんな事を言ってくるのか、ルシエルは分からなかった。
だから、何も答えられなかった。
不意に、アルフレッドの手がルシエルの指先に触れた。
「っ!!」
ルシエルは突然の事に驚いて、思わず手を引いてしまう。
その反応を見て、アルフレッドは少し寂しそうに笑った。
「あ、あの……っ」
「すまない。……そうだ。釣りでもしようか?釣り糸と針は持って来たから。その辺で小枝でも拾って……」
そう言って立ち上がったアルフレッドは、湖を見の反対側、林の方へと足を踏み出した。
「ま、待ってくださいっ」
ルシエルは慌てて立ち上がって、アルフレッドの手を掴んだ。
手を触れられただけなのに、拒んでいると誤解させるような態度をとってしまった自分にイラついた。
さらに、そんな自分に対して寂しそうな顔をさせてしまった事が辛かった。
拒んだんじゃない。そう言いたかったのに、言葉にできなかった。
ただ、そんな状態でアルフレッドが自分から離れて行くのが嫌だった。
手に触れられるのは嫌じゃない。
それを伝えたくて、思わずアルフレッドの手を取ってしまう。
振り返ったアルフレッドの顔を見て、思わずパッと手を離した。
「えっと……その、僕も行きます」
アルフレッドは、驚きの表情を微笑みに変えて「じゃ、行こう」と、二人で竿になるような枝を探しに行った。
それからしばらく二人は釣りを楽しんだ。
簡易的な釣りながら、楽しそうに糸を垂らすアルフレッドを見て、そうか、この人はまだ18歳だったな、とルシエルは思った。
そう言うルシエルも、まだ16歳だったが。
しばらくは、他愛のない会話をポツポツと続けて、たまに小魚を釣って、放す、という事を繰り返す。
自分達以外に誰もいない場所。
恋愛ゲームには出てこない場所。
そこに憧れのアルフレッドと二人きりだと言う状況に、ルシエルは胸が熱くなった。
ずっとここに居たい。
そんな事をぼんやり考えた。
陽も傾いてきて、そろそろ帰ろうか、と話していた時だった。
「わっ!何か、かかった!」
ルシエルの糸に何かが引っかかる。
急にクンッと引っ張られた事で、思わず湖の方に身体が傾いた。
「わ、わっ!!」
咄嗟にアルフレッドがルシエルの身体を抱き寄せた。
その勢いで、二人とも後ろに転がって尻餅をつく。
「っ、てて」
「っ!申し訳ありません!!」
痛がるアルフレッドの声にハッとなって、ルシエルが振り向きざまに謝った。
しかし、アルフレッドの頭の上を見た次の瞬間、ルシエルは思わず吹き出してしまった。
どうやら、釣り糸にかかったのは大き目のカエルで、それがアルフレッドの頭の上にちょこんと座っていたのだ。
金髪の上に、黄緑のカエルが座って「ゲコー」と鳴いた。
「ふっ、あはは!」
「ん?」
頭上に何かあると気付いたアルフレッドが、頭に手を伸ばす。
するとカエルはピョンと飛んで、今度はルシエルの顔に張り付いた。
「は、ひっ!ゃぁああ!」
それまで笑っていたルシエルが、今後は変な悲鳴を上げる事になった。
カエルは直ぐにまたどこかへと跳ねていった。
「……っぷ!ククク!」
今度はアルフレッドが笑う。
それを見て、またルシエルも笑った。
お互いお腹を抱えて笑う。
「ふふっ!……はぁ……はぁ」
そして、どちらからともなく、笑うのをやめた。
二人の距離は、尻餅をついた時のまま。
抱きしめられるほど、二人の距離は近かった。
そのまま二人は見つめ合う。
「触れ、たい」
アルフレッドが、小さくそう呟いた。
それはそれは、小さな声で。
しかし、ルシエルはそれをちゃんと聞き取った。
聞き取って、顔を真っ赤に染めた。
なぜアルフレッドはこんな事を言うのか。
触れたいとは、どう言う意味なのか。
知りたい。
けど、怖い。
アルフレッドの手が、ルシエルの頬を撫でた。
ルシエルは、再び過剰にピクリと反応する。
それに気を使うようにアルフレッドはすぐにルシエルから手を離して、パッと立ち上がった。
「さて、帰ろうか」
「……っ、はい」
今度は、アルフレッドの手を握る勇気は出なかった。
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