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旅の恥はかき捨て …13
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着いたところは、ここの領主が管理している一画で、この避暑地では名物になっていると言う場所だった。
混雑を避けるため、領主の許可がないと入れないようになっているらしく、この日はアルフレッドの立場上、安全のために貸し切りとなっており、4人(と護衛)以外は誰もいなかった。
アルフレッドに案内されて丘に登ると、その先にはルシエルの思った通りのひまわり畑が広がっていた。
その景色を初めて見るルシエルとミシェルは感激して、ずっと興奮しきりなのをアルフレッドとレオンが暖かく見守る感じで、午前中はあっという間に過ぎた。
4人で軽食を取った後、当初の予定通りミシェルとレオンは街へと繰り出して行った。
二人きりになってからは、ひまわりの名前(この世界でもひまわりと言うようだ)やら、ひまわりの特徴やらをアルフレッドが説明して、ルシエルがそれに頷くと言った程度の会話がポツポツと続いた。
その後、ふと訪れた沈黙に、ルシエルが今日の一大イベントを思い出す。
アルフレッドに昨日の返事をしたいけれど、どうやって切り出そうかと考えていた時だった。
「花の近くまで行ってみようか?」
アルフレッドがそう言って立ち上がった。
「は、ハイ!」
ルシエルは、ひまわりの下まで行ったら告白しよう、と心に決めアルフレッドに着いて歩き出す。
ひまわりの側までいくと、それは2メートルを越す高さで、二人はまた無言で見上げる事となった。
「ひまわりって、なんでずっと太陽を追いかけてるんだろうな」
「そう……ですね」
最近、薄れつつある前世の記憶。
この花の名前にしてもそうだ。
実物を見てから(あぁ、こんな花だった)と思い出したくらいだ。
ひまわりが太陽の方を向く理由は、理科か何かの授業で聞いた気もする。
けれど、その内容は全く思い出せなかった。
自分はすっかりこの世界の人間なんだなぁ、と不思議な事をルシエルは考えた。
そして、沢山のひまわりを真下から見上げるという、前世では経験しなかった初めての体験に、ルシエルはさらに不思議な気持ちになっていた。
前世と今世を跨いで、いろんな経験をする自分は何者なのだろうと。
さわさわと風で葉が揺れる音を聞きながら、ルシエルは何気なくアルフレッドを見た。
「っ!!」
隣にいたアルフレッドは、ひまわりでなくルシエルを見ていた。
目が合うと、その微笑みがさらに柔らかくなる。
ふと、ある疑問がルシエルの頭に浮かんだ。
意識せずに、その疑問は口からスルリと出てしまう。
「あの……アルフレッド、様は、なぜ私のような者の事を、その……想ってくださるのですか?」
思わず口にしたその疑問。
前世と今世で、全く違う道を歩む自分は、一体どこがどう違うのか。
見た目か?家柄か?
きっと、前世の自分ではこのような事にはならなかったのだろう。
そう思うと、心に風が吹いたような気がして、ルシエルは小さく身震いした。
アルフレッドは、フイと目を逸らした後、こう言った。
「それは……運命の相手だと、思ったから」
「……うん、めい?」
ルシエルは、その意味が分からず、思わず聞き返した。
アルフレッドはそっぽを向いたまま、コホンと小さく咳払いをする。
その耳はほんのり赤く染まっていた。
「上手く、説明できないが……なんて言うか、その、君しかいないと思ったんだ」
アルフレッドの照れが、ルシエルにも移った。
「正直、今まで色んな女を見てきたし、触れてきた。けれど、ルシエル君はその誰とも違った」
ルシエルは何も言えず、ただ頬を染めてアルフレッドを見る。
「初めてだった。自分からこんなに欲しいと感じたのは」
ルシエルの頬はどんどん染まる。
「何でだろう。上手く言えなくて、申し訳ないが……」
そう言って、アルフレッドは少し俯いた。
「あの……もし、僕が今より不細工だったり、平民の子供でも、そういう風に言ってくれますか?」
黙っているのも居た堪れず、ルシエルはそう聞いた。
「え?……うん。そうだな」
アルフレッドはしばし考えた。
ときめいたのは仮面をつけていたルシエルだ。
顔で選んだわけではない。
平民に関しては、出会う機会が無いので何とも言い辛いが、もし出会えたのならそれはそれでさらに運命を感じるだろう。
「好きになる。きっと、どんな君でも。……現に、性別関係なく好きになったんだ。だから……」
そう言ってルシエルを見たアルフレッドの目はとても真剣なもので、ルシエルは一気に体温が上昇するような気持ちがした。
この人なら、前世も含めて自分を受け入れてくれるのではないかと思わせるほどの熱い視線を、ルシエルは受けた。
何か言わなければ、想いを伝えなければ、とルシエルは口を開く。
「ぼ、僕は……」
けれど、言葉が出てこない。
一言、好きだと伝えるだけなのに。
ミシェルには言えたのに、何故だか口から出てくれない。
(伝えたい。想いを伝えたい!)
熱く潤んだ目でアルフレッドを見上げると、アルフレッドがルシエルをガバリと抱き寄せた。
「そんな目で見られたら、離せなくなる。……どうしたらいい?」
アルフレッドの告白に、ルシエルの胸は更に熱くなった。
ルシエルは自分の気持ちを伝えるように、その背中に手を回してさらに身体を密着させた。
「僕……っ、アルフレッド様がっ、す、っ……好、きで」
「す」と言う最後の言葉は、アルフレッドの口に吸い込まれた。
激しく唇を吸われた後、アルフレッドが少し口を離しておでこをコツンとルシエルに付けた。
「昨日の返事が聞きたい。僕と付き合ってくれますか?」
「っ、はぃ……んん」
再び、最後の言葉はアルフレッドに飲み込まれた。
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