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それぞれの思い …1
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アルフレッドとルシエルが会うのは、だいたい園芸部の温室であった。
アルフレッドは、苦労して花を咲かせたラベンダーを王宮の庭にも根付かせる事が出来るまで温室の花達も手放したくないと、園芸部顧問のランバートを説得し、特別に温室に出入りする許可をもぎ取ったのである。
一学期の学期末テストが終わったその日の放課後……
「ん、ん……ぅ」
学園裏の温室の中で、重なり合う二人の影があった。
ルシエルを掻き抱くように腕を回したアルフレッドが、無心に目の前の唇を貪っている。
「んぅ、ある…………っ、アルフ……んんん」
ルシエルはその口付けに抵抗していた。
と言っても、本気で嫌がっているわけではないが……
ただ、今日のアルフレッドのキスはしつこく、いつ誰が来るか分からない放課後の温室では、どうにも落ち着かずに、早く離れたくて仕方がなかった。
経験の少ないルシエルは、キスで毎回いっぱいいっぱいになるのだ。
その時「カタリ」と温室のドアが開く音がした。
「っ!!」
今度こそルシエルは本気で抵抗する。
アルフレッドが名残惜しそうにゆっくりと身体を離すと、ルシエルはその腕から慌てて抜け出した。
温室の入り口からルシエル達のいる場所は、緑のカーテンで直接見える事はないが、それを分かっていてもルシエルはアルフレッドと距離を取った。
そして、その場を誤魔化すかのように足元のスコップを握ったところで、レオンの声が聞こえてきた。
「コホン……えー、ルシエル様、いらっしゃいますか?」
「!!っ、はい!こちらにっ!」
緑の隙間から顔を覗かせると、レオンが入り口のところに佇んでいた。
「お一人ですか?」
遠くからわざわざレオンがその様に聞いてくるという事の意味を考えて、ルシエルは顔を真っ赤にした。
「あ、いえっ!あのっ」
「私もいる。何の用だ?」
ルシエルの後ろからアルフレッドも顔を覗かせた。
(ち、近い!近い!)
アルフレッドはルシエルの背に着きそうなほど身体を寄せていた。
ルシエルは、例え事情を知っているレオンと言えど、この様なところを見られるのは恥ずかしくて仕方がなかった。
しかし、そんな二人に慣れたレオンは顔色一つ変えず二人に近付き、キレイに丸められた羊皮紙をルシエルに差し出した。
「先日、王宮への出入りの許可が出ましたので、お知らせに。これがその証書と、こちらが入城の許可証です。城の南棟の一階や迎賓館は出入り自由です。もちろん中庭も。その奥の北棟は、ご存知の通り重要な政務と王家の住居になりますので、立ち入る事は出来ません」
差し出された物をルシエルが受け取る。
「あ、ありがとうございます!」
「そして、中庭の西側の門から、アルフレッド様のいらっしゃる離れに行けるのですが、この門から先は一般の方は入れません。入る時はアルフレッド様とご一緒になるかと」
「わ、わ、分かりました」
レオンに、アルフレッドとの逢瀬の面倒を見られている事が恥ずかしくて、ルシエルは顔を真っ赤にして俯いた。
そんなルシエルを、アルフレッドがグイと抱き寄せた。
「う、わっ!」
「じゃあ、さっそく行こうか?」
「えっ?」
「今日はもう用事はないんだよね?」
「え、えぇ」
「じゃ、準備して行こう」
「えっ?なにをですかっ?えっ?」
噛み合ってない二人の会話に、レオンは小さく溜息を吐いた。
「アルフレッド様、ルシエル様にちゃんと説明して差し上げたのですか?」
「……何をだ?」
「ルシエル様が中庭に入れる理由と、アルフレッド様がこうして自由に温室に出入りできる理由ですよ」
「……温室に来る理由は話した」
「……そうですか。では、後は私からお話しします」
再び小さく溜息を吐いたレオンがルシエルに説明したのは、ルシエルがアルフレッドと会うために、まず自由に王宮に出入り出来る許可証を取る事、その理由として、中庭に新しく花壇を作る手伝いをする事、と言う事だった。
この温室で育てているラベンダーを中庭に植え替える、それをルシエルに手伝ってほしい、とアルフレッドが付け足した。
レオンの説明を聞いたルシエルは、何かが頭に引っかかるのを感じた。
チクリと小さな頭痛と共に頭に浮かんだのは、見事に薔薇の咲き誇る薔薇園だ。
「……あの、王宮には、薔薇園はありますか?」
ほぼ無意識に、ルシエルはそんな質問をした。
アルフレッドと会うために、王宮に出入りする……
しかも、花の世話をしに。
その事が、ゲームを彷彿とさせたからだ。
主人公マリーは城の薔薇園でアルフレッドと愛を育むのだ。
「ええ。中庭に隣接しておりますが……あぁ、ルシエル様は薔薇がお好きでしたね」
レオンはそう言ってニコリと微笑んだが、ルシエルはそれに反応する事は出来なかった。
薔薇園に近付くという事は、今後マリーに会うかもしれないという事では?とルシエルは考えた。
「ルシエル?……あぁ、気になるなら、今からでも見に行こう」
ルシエルが黙った事が、薔薇の事を考えているせいだと思ったアルフレッドは、そう提案した。
「えっ?いや……あ、はい」
ゲームの事を気にしない様にしようと思っても、どうしても気になってしまう。
アルフレッドと関わる限り、ゲームの内容が垣間見えるのは仕方のない事だ。
そう頭では分かっていても、心が追いつかない。
(でも……考えたって、仕方ない)
ルシエルはゲームを頭から追い出す様に、ブンブンと頭を振った。
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