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それぞれの思い …4
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ルシエルとアルフレッドは、人生で初めての最高の絶頂を迎えたことにより疲れてしまって、その後、裸のまま抱き合って眠ってしまった。
……レオンが呼びにくるまで。
そんな事があった日の夕刻。
王宮の奥。
一般人は決して入れない区域のとある一室で、溜息をつく壮年の男がいた。
彼の名は、グラシアン・ローゼンクラウン。
この国の王で、アルフレッドの父である。
「……で?アルフレッドはそのルシエルと付き合っておるのか?」
「はい。間違いございません」
机を挟んで立つ男は、王の秘書である。
「またいつもの戯れ……だとしたら、お前が私にわざわざ報告する訳がないな」
グラシアン国王は、再び溜息をつく。
「はい。アルフレッド殿下とルシエル様が関係を持ったのは、夏休みの避暑地での事と思われます。そこからもう3ヶ月。アルフレッド様は、今までどんなご令嬢とも3ヶ月続いた事はございません。それを鑑みれば、ルシエル様は特別なのだと推測されます」
「しかし……ルシエルは男であろう?ルーズベルトのところの長男であったな?」
「はい。ラウル・ルーズベルト卿のご長男様にございます。私も最初はただ仲の良い友人だと思ったのですが……どうもそうではありません。アルフレッド殿下は、本気のようです」
「本気、とな?」
グラシアン国王が、眉根を寄せた。
「今までに見たことない顔をルシエル様にお見せになるそうです。その顔、距離、態度、行動、どこを取っても、アルフレッド殿下は本気でルシエル様を愛し「待った!」」
秘書の言葉を最後まで聞きたくないと、国王は遮った。
「はぁ……女癖が酷いとは思ったが、まさか男にまでに手を出すとは……。愚息が……」
グラシアン国王がそう言って再び溜息を吐こうとしたと同時に、その部屋のドアが、大きな音を立てて開かれた。
「あなた!!」
入って来たのは、洗練された気品と女神のような美しさを纏った、この国の王妃でアルフレッドの母、ビクトワール・ローゼンクラウンである。
「ビクトワール!……どうした?」
妻の突然の登場に、グラシアン国王は驚いた。
「どうした、ではありませんわ!たまたまここを通りかかったら……先程、変な事をおっしゃっていらしたでしょう?聞こえましてよ?」
「変なこと、とは?」
王妃の突然の剣幕に、この国の王はタジタジである。
「先程、アルフレッドのことを愚息とおっしゃいましたよね?」
「う……まぁ、しかし、アルフレッドが……その、男とだな……」
「良いではないですか!アルフレッドがようやく本気で他人を愛す事が出来たのです!親としてこれを喜ばずしてどうするのです!」
ビクトワール王妃もまた、アルフレッドとルシエルの事は聞いていた。
彼女は恋愛至上主義者である。
が故に、アルフレッドが色んな女と遊ぶ事を許して来た。
と言うか、見守って来た。
アルフレッドが持つ問題に、なんとなく気付いていたのだ。
勃たない事を知っていた訳ではないが、息子が誰にも本気にならない事は知っていた。
愛する人のいない人生など考えられないビクトワール王妃は、そんな息子の将来を心配していた。
だからこそ、色んな女と出会う中で、いつの日か本気で愛する人を見つけて、アルフレッドがその相手と幸せになる事を願っていたのだ。
もちろん、その相手が男だと言うことを知った時は、驚かずにはいられなかった。
しかし同時に、喜んだのだ。
息子が本当の愛を知ったであろう事に。
夕食時に顔を合わせる息子が、ここ最近はとても表情豊かになり、幸せそうにしている事。
時折り、何かを思い出したように、可愛らしく微笑む事。
それらが、母として息子を心配していたビクトワール王妃には、眩しく映って仕方がなかった。
「相手が男だからなんだと言うのです!あの子が幸せならば、それで良いではないですか」
「いや、分かる。ビクトワールの言い分も分かる。が……あれは王太子なのだ。色々問題もあるであろう」
「ぐ……。ですが、今のあの子を愚弄するのは許しませんからね!!」
ビクトワール王妃は言いたい事を言って、慌ただしく去っていった。
グラシアン国王は、開かれたままの扉を見て、大きく溜息を吐いた。
「分かっておるが……男同士は認められんのだ……」
ドアに向かって、グラシアン国王がつぶやく。
「婚姻、の件ですか?」
この国では、同性婚は認められていないのである。
「まぁ、それもある。王太子がこのまま結婚もせず一人でいるわけにはいかない。何せ、子孫を残さねばならぬのだ……。なにより、国民に何と説明すれば良いか……」
頭を抱えたグラシアン国王に、秘書が少しの間考えてから口を開いた。
「そう言えば、遠征に出ている騎士団から、何度も上奏文が来ておりましたでしょう?」
「何のことだ?」
「同性同士の婚姻の件です」
「あぁ、あれか」
ミシェルが読んでいる小説ではないが、実際に騎士団内で同性同士で愛を育む者達は珍しくなかった。
男だらけの環境でパートナーを見つけ、婚姻を望むカップルも少なくなく、それらの士気を上げるために、騎士団からは同性婚を認めるように申し立てがあった。
「あれを、もう少し検証されてはいかがでしょう?」
「うーん。しかしなぁ。……とりあえずは、アルフレッドの様子を見るのが先だ」
「……左様でございますか」
「そうだ!先程の話、あれをアルフレッドにしよう」
「えっ?あれを、アルフレッド殿下に、でございますか?しかし……」
「ちょうど良いではないか。時間を置けばアルフレッドも頭が冷えるであろう?うまく内容を詰めておいてくれ」
「いや、ですが………………はい。承りました」
秘書が出て行った部屋の中で、国王は父親の顔でため息を吐くのであった。
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